進撃の巨人
□lastmoments
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「どう、してこんな、事するの…っ」
怯えた顔も震える手足でさえ愛おしく思える。
「マテリアを愛してるからだよ」
訳がわからない、といった顔で必死に恐怖に打ち勝とうとする
その仕草が逆に僕の心に火をつける
「少し痛いと思うけどすぐ楽になるからね」
手に握るナイフに力を込める
マテリアを殺して僕も死ぬ
これで世界は救われるし僕も幸せになれる。万事解決だ。
「ら、いな…たすけ…」
マテリアは喉元に宛てがわれたナイフに顔を青くし愛する彼に助けを乞う
なんで、どうして
「…なんでライナーなの?どうして僕じゃないの?君をこんなにも愛しているのに…」
ナイフを、軽く食い込ませる
マテリアの白い肌から赤い血が滴り落ち僕はそれを綺麗だと思った
「いやだ…っや、めて…ごめ、なさ…」
目に涙を浮かべ今度は僕に許しを乞う
僕は彼女の腹部にそっと手を当てた
「マテリアが僕のためだけに生きてくれるなら考えなくもないよ?でもね、無理でしょ?だって君のココにはライナーとの子供が、赤ちゃんが居るでしょ?」
マテリアはなんで知ってるの、と言った顔をしているが親友のライナーが僕に言ってこないわけがない、違うかい?
だってライナーは僕がマテリアを好きだと知らないんだ
だから僕にこんな残酷な仕打ちができる
「マテリアが妊娠した」
その言葉を聞いたときの僕の気持ちはまるで地獄に叩き落とされたかのようだったと例えるのが妥当であろう。
僕の愛する人は僕ではない、ましてや親友との子を孕んだ
許せない
今すぐ腹を引き裂いて中をぐちゃぐちゃにかき混ぜてやりたい気分であるが僕も流石にそこまで鬼畜では無い。
全てを終わらしてあげよう、君の死が僕への報いだ
「すぐ逝くから待っててね」
「っ!…………____________。」
最後に何かを言いかけて息の根をとめる彼女をみて僕はほっとした
もう一度でもあいつの名前を読んでいたなら、僕はきっともう一人手にかけるハメになるだろうからね
頬を伝う冷たいしずくがマテリアの頬にぽつりと落ちる
「どうして…こうなっちゃったんだろうね…」
もう二度と息を返すことのない冷たい唇に自分の唇を重ねる
都合のいい妄想もありえもしないもしもの話も
何度も何度も願った
叶うことはついにないまま僕の世界に終が訪れる
「さよなら、愛しき世界…──────。」