進撃の巨人

□私だけは
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仕方ないと思うの、誰だって自分が可愛いのだから

あの時のキルシュタインの判断は間違っちゃいない

仲間の死を利用して助かろうとした、助けようとした

間違ってない、ほんとに至極正しい事で、キルシュタインがその判断をした事によって多くの命が救われたのも確か

だけど私は、私くらいは恨んでも許されるはずだ

あの時キルシュタインが見捨てなければ私の愛する彼は死ぬことは無かったんだ。

さらにいうなら煽るだけ煽って早々にガスを切らしたアッカーマンをも恨んでも許されるだろう

貴方達を勇敢だと褒めたたえる沢山の人の中で私だけが恨んであげる

ずっとずっと、許しなどしない。私の怒りが消えることは絶対にない


「マテリア、眉間にシワを寄せてどうしたんだい…?」

不意に声をかけられ自分がまた昔のことを思い出していた事に気づく

「すみません考え事をしていました…」

そう答え、自分が所属している班の班長であるナナバさんにぺこりと頭を下げる

「すごい顔だったぞ、お前もまぁまぁ可愛いのにもったいないやつだな」

「ユミルっ!… マテリア、なにか悩んでるんだったら相談に乗るからね…? 」

同じ班のユミルとクリスタが気にかけてくれる

ユミルはあんな言い方だけどあれで彼女なりの愛情表現なのだと最近気づいた

「ありがとう、でも大丈夫だよ!」

元気元気!と何の異状もないのを証明するために手をぐるぐるとまわしてみせた

「……んづぁああああっ!!!」

がその行為は自虐のほかなら無かった

私は前の巨人討伐任務に当たっていた時に少しヘマをされて…されて、ほんの少し腰に穴があいたのだ

まぁ言ってしまえばキルシュタインにこしにトリガー刺されたというだけの話なんだけどね

「 マテリア!?へ、平気かい!? 」

ナナバさんは急いで私の元へ来てくれて背中をさすってくれる

「はいぃ…」

今にも泣き出しそうな声を出す私にユミルは馬鹿だ、と笑い転げた

「あーっっお前ってホント馬鹿だよな…っははは!!…って、そろそろ来るんじゃないのか?」

今は午後2時…

ユミルの言う通り、そろそろやつがやって来る時間だ

私はユミルの一言に苦虫を潰したような顔になりその場に固まる

コンコン、とノックが聞こえ私はついに窓からの逃亡を図ろうとするが痛みに耐えきれずその場にこける

「ジャン・キルシュタインです、 マテリアは居ますか? 」

「あぁ居るよ、ちょっと待ってね…ほら、 マテリア行っておいで? 」

キルシュタインが来た

こいつは私の怪我に責任を感じているらしくいつも決まった時間に私の元を訪れるのだ

「…はーい」

ナナバさんにやさしく諭された私は渋々ドアをあけ行ってきますと小さく言い外に出る

「キルシュタインはなんでこう毎日来るの」

会って目もあわせないまま私は彼に疑問を投げつける

「そりぁお前に怪我さしちまったから…心配で?」

キルシュタインも自分がなぜこんな行動をとっているのか分からないらしく自分の事ながら疑問系で返してきやがった

「意味わかんない。じゃああんたは自分の事怪我さしたやつと毎日会いたいと思うわけ?」

と私が聞くと難しそうな顔をして動きを止めてしまった

「ちょっと、悩みこまないでよ…」

私資料室に用事があるから、といい馬鹿を放置で歩きだす

「俺なら…嫌だ」

「俺なら、いやだけどもしそれがお前なら良い」

また訳のわからない事を…

ホントは気づいてたんだけどね、キルシュタインが私に気があって毎日毎日足繁く通っていることに

「あっそ、いいから早く」

だけど私はこいつを許しちゃいけないし許せない

筈なのに…ほんの少しずつこいつにほだされる自分が居る。



「なぁ、俺さ… マテリアが好きなんだよ 」


「そう、私は嫌いだから」

私はキルシュタインが嫌い

自分に何度も言い聞かしたセリフだ


「…知ってる。お前が俺を嫌っていて恨んでる事は知ってる」

許してもらえないことも知ってるし今更許してくれというつもりもない

とキルシュタインは続けた

「でも、それでも俺はお前が好きなんだ」

「…いい加減にして!」

私はキルシュタインの首元を掴み壁に強く押し当てた
背中が痛みじわりと血の滲む感覚がする

「わかっているならどうして関わってくるの?!あたしはあんたを恨んでなきゃいけないのよ!?」

そうじゃないと彼が救われない

「それでもいいんだ、恨んでいてくれるのでもいい、ずっとお前の中に俺が存在できるなら」

気持ち悪い。素直にそう思った

だってコイツの言ってることはめちゃくちゃで最低で自己中心的すぎるのに、それにときめいてる自分がいるんだ。

ありえない、自分の感情が気持ち悪い

「し、死ねば良いのに…」

私の手から力が抜けだらりと両手を横に下ろす

「俺はお前を守って死にたい」

そう言って抵抗することのない私を壁際に反転させ唇を塞ぐ

「…っ…やめ、ろ…このクソ野郎が…」

腰の痛みに耐えつづけていた私には涙を貯めきつく睨むのが精一杯であった

「ごめんな…」

キルシュタインは今までに見たことのない情けない顔をして私を見つめる

「許さないから…」



許さない、絶対に許さない





私は自分を許せない…
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