進撃の巨人
□痛い首
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私の目線はいつも斜め上
愛しい彼を見つめるためなら首の痛さなんてどーってことない
彼の目線はいつも斜め下
でも彼は私なんて見ていない
目線が交わる事はない
「アニ、おはよう」
「…おはよう、ベルトルト」
目の前でかわされる会話、二人は付き合ってこそ居ないもののとても親密に見える
「マテリアーー、はよ」
と私の頭にポンと手を置くトリ頭に私は振り返り
「おはじゃん!」
と明るく返す
ジャンとは目が合うのに、どうして彼とは目が合わないのだろうか
どうしてアニなのだろうか
こんなに好きなのに、こんなに見つめているのにひとつも伝わらないなんて低身長とは関係がなくてもそのせいにしてしまう他ないほど理不尽な世界だ
「なぁマテリア」
となりを歩くジャンが少しこわばった声で話しかける
「なーに?」
ほんの少し痛む首を抑えながら笑顔の仮面をかぶる
「俺なら…」
ジャンは躊躇うように一度息をつきそしてこう言った…
「俺なら首、痛くなんねぇと思うぞ」
私はすぐその言葉の意味を理解した
だってジャンはいつだって下心バレバレだもん
「…痛くないよ、痛いのは、首じゃないよ…」
私の薄っぺらい仮面なんてすぐに壊される。ジャンはいつもそうだ、私が欲しい言葉をくれる
「心が、痛むなら…俺が癒すから」
私のためならこんなくっさいセリフも言えてしまうジャンを今までも愛しいと思わなかったわけじゃない
逃げたくなかったんだ
ジャンを好きになることは自分の気持ちから、現状打破出来ない悲しみから逃げているようにしか思えなかったから
「俺は、お前にとって都合のいい奴でいれたらそれでいい」
ほら、またそうやって欲しい言葉をくれる
逃げてもいいかと思ってしまう
「…」
私は無言でジャンに抱きつく
「逃げじゃない、お前の選択は逃げじゃない…。」
ジャンは左手を私の腰に添え右手で頭を撫でてくれる
この暖かく優しい手に私はどれほど救われたか…
数え切れない優しさが私の身にしっかり刻み込まれている
私は彼を…ジャンを好きになりたい
もっともっと、好きになりたい
「…言っとくけどジャン見てても首、痛いからね…」
弱々しく告げる私にジャンはそれは悪かった、と笑って返す
ジャンの胸にうずめたぐしゃぐしゃの顔をあげるとそこにはひまわりのようなジャンの笑顔
私は泣いてるのに…この馬鹿
とか勝手に心の中で罵ってジャンの足を軽く蹴る
「好きだ、マテリア、ずっとずーっと、大好きだ!」
「うるさいよ……………
まってて、ジャンの好きなんて飛び越しちゃうくらいジャンの事好きになるから」
彼は顔を赤く染めなってみろと啖呵をきった
確信というか運命のような言葉だった、声にしたとき余りにもしっくりしすぎてびっくりしたぐらいだ
まっててもらう時間はそうかからなさそうで良かった
そう思ったのはジャンには内緒だけどね。