進撃の巨人

□命の恩人
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私はもうすぐ死ぬ

なぜそう思うのかと言うと話は長くなる


三年前、壁が壊され巨人が侵入してきた。

私は生まれつき足が悪く、立ち上がることで限界で走る事など到底できはしなかった。

逃げる事ができなかった。

その時も私は死ぬんだと思ったのを覚えている

でも私はその時に死ななかった。

今、まだ、こうやって生きている。

私が助かったのは憲兵の人のおかげだった

その人は立体起動を上手く使い二体の巨人を一人で、一瞬で倒してしまった。
動く事ができなくて、大人しく巨人の胃のなかに入ろうとする私を助けてくれた。

その人は

今は連れて行ってやることが出来ねぇからここでじっとしてろ!
絶対助けてやるから…!

そういうとまた少し先の巨人の方へ飛んで行った。

私はあれから三年前、ずっとこの潰れた家で同じように逃げ遅れた子供達に
何時か助けが来るからね…
そう言い聞かせながら待っていた。

彼が助けにきてくれるのを。

もしかしたら死んでしまったのかもしれない、そう思うと胸が痛くなって知らずの間に涙が溢れた。

毎晩毎晩彼が巨人に食べられる夢をみ、うなされて起きる。そんな日が続いた。

たった一度助けられたそれだけの人を、もう顔も覚えていないような人を

私は好きになってしまったんだ





そして今、私の目の前には子供達を次々に丸飲みにした巨人が居る。
どうやら生きたままじゃないと食べたくないらしい。
奇行種だ。
巨人は私を見つけると生きたまま飲み込めるように優しくつかんだ
私はまた何もできない、今度こそ食べられて死ぬんだ

そう思ったその時…

「そいつを離せくそ巨人が…!」

雄叫びと共に巨人の血が吹き出し、私の体は地面に叩きつけられた

私はすぐ気づいた


彼だ…三年前の彼が、また助けてくれたんだ…
顔や声はもうほとんど忘れている、思いだせなどできないが私には分かった

「おい!大丈夫か!?」

「……ありがとうございました…私はあなたに二度も助けられた…」

覚えては居ないかもしれないけど三年前のあの日、私はあなたに助けられていたんです…

そこまで話すと彼は何かを思い出した様に私の顔を見た。

「お、お前…もしかしてあの時の…」

「はい、あの時の…ずっと…待ってました、あなたのあの時の一言がずっとずっと私の支えでした…」

彼は真っ青な顔をして私に何度も謝った。

「すまなかった…あの後いろいろあって助けに来れなかったんだ…こんなモノ言い訳にもならないのはわかっているが…けして忘れていたわけじゃなかったんだ…許して欲しい…」

三年間気掛かりでしょうがなかったんだと彼は目尻を潤しながら私を抱きしめてくれた

「生きてて…よかった…もう置いてなんか行かない…今、助けてやるからな」

彼が今涙を流している理由は己の背徳感からくるモノだろう、そうわかってはいる
でも、彼は私を覚えていてくれた、気にかけていてくれた、その事実だけで私は十分だった。

「ありがとう…っ」

無事助かったら彼に三年分の募った思いを伝えよう。
驚かれるかもしれない、引かれるかも知れない。
でも、それでも伝えずには居られない。私はそれほどまでに彼を…愛しているのだから…。

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