愛する君からの贈りもの

□第八話
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そして、ナツメが楽しみにしていた、非番の日がやってきた。

ナツメは朝早くから薄紫色の着流しに着替える。

胸元を乱すと、色っぽさが際立った。

必要な携帯と財布だけを懐に入れると、部屋を飛び出した。

廊下をバタバタと走り、玄関に向かい下駄を履く。

襖に手をかけた時だったー…


雲雀「ナツメ…」

『あ?あァ、雲雀か』

雲雀「…今日、非番を貰ったんでしょ」

『あァ。ちょっと行ってくる』


雲雀に手を軽く振り、ナツメは屯所から出て行った。

ナツメの後ろ姿を寂しそうな瞳で雲雀は見送ったー…




ーーー
ーーー


迷いながらも無事に真選組屯所に着いたナツメは、門番にいる隊士に声をかけた。


『…あの、疾風団団長の風間ナツメだ。沖田総悟に用事があって来たんだが…』

隊士「沖田隊長に?どんなご用事で?」

『あー…えと…何て言えば良いんだ…』


遊びに来たとも言えないナツメは、言葉を詰まらせる事しか出来ない。

そんな困っているナツメの前に、ヒラヒラと手を振りながら沖田が現れた。


沖田「ナツメェ、久しぶりでさァ」

『そ、総悟ッ!』


今すぐに抱きつきたい衝動をおさえ、ナツメは近づいてくる沖田を見つめた。


沖田「コイツは俺の嫁でさァ。次から何も言わずに屯所に通せ」

隊士「は…はァ」


顔を引きつらせながら返事をする隊士に、ナツメは慌てて否定をする。


『ち、違ェ!俺はコイツの嫁なんか…』

沖田「あ、間違えやした。未来の恋人でィ」


沖田はナツメの肩に腕を回すと、体を密着させた。


『やっ!な、何するんだよ!離せ!恥ずかしいだろ!』


抵抗するナツメに、沖田は口を尖らせて拗ねる。


沖田「むう。ナツメのケチ」


沖田とナツメは真選組の屯所の中に入って行った。

真選組の屯所に入るのは、四回目になるナツメ。

何度来ても、疾風団の屯所より古いと感じる。


沖田「結構早く来やしたねィ」

『まァな。暇だったし』

沖田「どーせ俺に会いたくて会いたくて、仕方なかったんでしょ?」

『違ェ。暇だったからだ!』


頬を膨らませるナツメに、沖田はニヤニヤと笑う。

本当は一刻も早く沖田に会いたくてたまらなかったナツメであった。

廊下の角を曲がると、目の前から土方が歩いて来た。

土方は沖田とナツメに気づくと、眉を寄せて睨んだ。


土方「…おい、なぜここに疾風団がいるんだ」

沖田「俺の嫁でィ」

『違う。嫁じゃねェ』


すかさずナツメは否定をすると、土方はナツメを見下ろした。


『非番だから来ただけだ。土方に用があったわけじゃねェ』

土方「ほう。総悟に用事か」

沖田「これから俺とイチャイチャパラダイスをするんでさァ」


ニヤニヤと笑いながら言う沖田を、土方は眉をさらに寄せる。


土方「んな事してる暇があんなら、仕事しやがれ。オメー、今日非番じゃねーだろ」

沖田「違いまさァ。仕事しながらナツメと遊ぶんでィ」

土方「んな事できっかよ。風間、帰ってくれ」

『えっ…』

沖田「は?ふざけんな土方コノヤロー。ナツメの初めての非番ですぜ」


沖田はムッとしながら土方を見上げるが、土方は首を縦に振らない。


土方「ダメだ。昨日も一昨日も、ほぼサボってただろうが」

沖田「そんな事ないでさァ。しつこい土方さんのために、頑張って働きやしたぜ」

土方「働いてねーだろ!ほぼ俺にバズーカかまえてただけだろうが!」

沖田「それが俺の仕事でさァ」


口の端を上げて笑う沖田に、土方は額に手を置いてため息をつく。


土方「頼むから仕事してくれ。お前の始末書が溜まるばかりなんだよ」

沖田「なら山崎に回して下せェ」

土方「始めからサボらずに仕事をすりゃァ良い話だろうが」

沖田「俺ァまだ遊びたい年頃なんでィ」


ナツメの目の前で会話を続ける二人を、ナツメは後ろから見上げていた。

ナツメから見て、この二人はとても仲が良く見える。


土方「お前には説教が必要だな。ちょっと来い」


沖田の腕を引っ張る土方を、沖田は嫌な顔で睨んだ。


沖田「嫌でさァ。触らねェで下せェ。俺ァナツメとイチャイチャパラダイスするんでィ」

土方「んな卑猥な事を屯所内でするんじゃねェ。迷惑だ」

沖田「うるせーや。羨ましがってんじゃねーや、土方死ね」

土方「羨ましくねーし!死にもしねーよ!つか、来い。テメーにはたくさん仕事が残ってんだよ」

沖田「ちょっ…痛いでさァ!そんなに引っ張らないで下せェ、土方さん」


土方は沖田の腕をグイグイと引っ張る。

すると、沖田の腕を引っ張る土方の手を、ナツメが強く握り振り払った。

二人は驚いてナツメを見ると、ナツメは沖田の腰に抱きついた。


沖田「…ナツメ?どうしたんでィ」


ナツメは無言で沖田の隊服に顔をうずめているだけである。


沖田「…ナツメ。寂しくなったんですかィ」

『……土方ばっかり…やだよ、総悟』

沖田「…ナツメ」


ナツメは拗ねた顔で沖田の隊服をギュッと握りしめる。

そんなナツメを見て、沖田は優しく笑うと抱きしめ返した。


沖田「ごめん、ナツメ。俺ァこんなマヨネーズ野郎なんか、嫌いでさァ」

『…俺に、かまってよ』

沖田「ん、かまいやすぜ。今日一日、ずっと一緒でさァ」


沖田はナツメの赤い前髪をかき分けると、額に軽く口付けをした。

頬を赤く染めてナツメは沖田を見上げる。


沖田「ナツメ…」


ナツメの頬を軽く持ち上げる沖田は、唇を重ねようとしたー…その時。

ナツメの肩をグイッと後ろに引き寄せ、土方が沖田からナツメを離した。

キョトンとした顔で、ナツメは瞬きをする。


沖田「…は?何するんでィ」

土方「目の前でイチャつくんじゃねェ」

沖田「土方さんが俺にかまうから、ナツメがヤキモチを妬いたじゃねーか」

土方「知らねーよ、んな事」


沖田はナツメの腕を引き寄せると、強引に引っ張り部屋に向かう。


沖田「二度とナツメに触るんじゃねェ。ナツメに触って良いのは俺だけでィ」


沖田はズカズカと足音を立てながら、ナツメと行ってしまった。

その後ろ姿を、ため息交じりに土方は見送る。


土方「…ったく。あんな可愛いもん目の前で見せつけんな」


頭をかくと、土方は去って行ったー…




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