愛する君からの贈りもの

□第七話
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『なァ、晴彦。俺、非番が欲しい』


翌日。

ナツメは部屋を片付けている晴彦に、言葉を発した。


晴彦「非番…ですか?」

『あァ。一度も非番なんて貰った事ねーじゃん、俺。だから非番が欲しい』

晴彦「んー…ナツメには仕事がたくさんありますからね。非番は難しいんじゃ…」

『大丈夫!頑張って非番の日のぶんの仕事も頑張るから。だからお願い…』


顔の前で手を合わせるナツメに、晴彦は腕を組んで悩み始めた。


雪智「自分は、ナツメさんに非番を与えても良いと思うが」


そこに現れたのは雪智。

大きな体が迫力がある。


『雪智ィ!だよな!貰っていいよな!』

雪智「あァ。ナツメさんは毎日頑張っているからな。自分がナツメさんのぶんの仕事を引き受けよう」

『雪智…お前って奴は…もう大好き!』


ナツメは自分よりはるかに大きい雪智に抱きつくと、雪智はそっとナツメの頭を撫でた。


晴彦「仕方ありませんね…。非番はいつ欲しいんですか?」

『明日!明日がいい!』

晴彦「明日は無理です。また書類がたくさんくる予定です」

『あー…そうか。じゃあ明後日』

晴彦「明後日も無理です。明後日は三丁目の宝石店の警備がございます」

『ならいつが大丈夫なんだよ!』

晴彦「来週ですね」

『そんなに会えないのかよ!!』


ハッとしたナツメが口を押さえると、晴彦と雪智は首を傾げてナツメを見つめる。


『えと…ま、まぁ、来週だな。来週のいつだよ』

晴彦「んー、来週の火曜なら」

『分かった。じゃあ、来週の火曜に非番だな』


ナツメはニヤリと笑うと、懐から携帯電話を取り出し、部屋から出て行った。

残された晴彦と雪智は首を傾げる。



ーーー
ーーー


自室に戻ったナツメは、急いで沖田に電話をかけた。

電子音がなるばかりで、出る気配がしない。

数回電話をかけたが、どれも出てはくれなかった。


『…忙しいのかな』


ナツメは仕方なく電話を懐に戻すと、急いで書類整理をし始めた。


雲雀「ナツナツナッツーン!僕とあーそーぼっ!」


雲雀が勢いよく襖を開けて、部屋の中に入ってくる。

ナツメは気にせず、書類整理を続けた。


雲雀「ナツメェ。無視は嫌だよォ」

『悪ィが忙しいんだ。あとにしてくれ』

雲雀「やーだ!今遊びたいの!今遊ばなきゃダメなの!」


ナツメの肩を揺らす雲雀に、顔をしかめるナツメ。


『これが終わったら構ってやるから。それまで待ってろ』

雲雀「んもー!良いもん、ナツメに意地悪しーちゃおっ!」


雲雀はナツメの脇腹をくすぐると、ナツメは声を上げて笑う。


『あはははは!ま、待って!それやだっ!あはっ!ははははっ』

雲雀「おらおらおらーっ!雲雀くんのコチョコチョ攻撃ィ!」


ナツメは畳の上に転がるが、雲雀はくすぐる事をやめない。


『やめっ…やだ!あはははっ!やめろっ…!あはっ!』

雲雀「やめないもーん。ナツメが僕に冷たくするのが悪いんだィ」

『やめっ…お願い!あー…!も、…しつけーんだよ!!!!』


ナツメは雲雀を蹴り飛ばすと、雲雀は壁に背中を打ち付けた。


雲雀「痛ッ…!」

『これじゃあ総悟に会えなくなるだろーが!!』

雲雀「…え?総悟…?」

『あっ…』


ナツメは口を押さえると、雲雀は鬼のような顔でナツメを睨む。


雲雀「いつ会うって?」

『ちがっ…違うんだ。それは…』

雲雀「何?…もしかしてソイツと付き合い始めたの?」

『付き合ってない。今のは間違えたんだ…忘れてくれ』

雲雀「忘れないよ。聞いちゃったもん、僕。言えよ、ナツメ。いつ会うのさ」


雲雀は眉を吊り上げ、ナツメの肩を力一杯掴む。

ギリギリと爪が食い込んでくると、ナツメは眉を寄せた。


『痛い…!痛いよ、雲雀…』

雲雀「その男とはどんな関係か言えよ。ねェ、ナツメ」

『何もない…本当なんだ。雲雀…信じてッ…』


痛みで涙が滲んでくるが、雲雀の瞳孔は開きっぱなしだった。


雲雀「会うなんて、許さないよ。会わないでしょ?ねェ」

『お願い…!離して、ひばっ…』


その時だったー……ドクンッ。

ナツメの心臓が大きく揺れ痛みが走る。


『うっ…!!』


そのまま滝のように、口から血が吐かれた。


『ぐっ…!ぐはっ…うっ』


雲雀は驚き、咄嗟にナツメから離れると、ナツメは身を縮めて畳の上に倒れた。

血を吐き続けるナツメを目の前に、雲雀は硬直するばかり。


『うっ…ゲホッ…ゲホッ』


久しぶりの吐血に、ナツメの顔色は青紫に変色していく。


雷太「…お、おい!大丈夫かよ!」


たまたま通りかかった雷太が、血を吐いているナツメに駆け寄った。

ガクガクと全身を震わせ、体温が冷たくなってきているナツメ。


雷太「おい!ナツメ、ナツメ!」


ナツメを抱きかかえる雷太は、硬直していた雲雀に向かって叫ぶ。


雷太「雲雀!晴彦と雪智、それに時雨も連れてこい!すぐにだ!」

雲雀「こ…腰が動かない、よ…」

雷太「…チッ。ナツメ、待ってろよ。今、みんなを呼んできてやるからな」


雷太は立ち上がり、部屋を出ようとしたが、その足をナツメは掴み遮った。

驚き振り返る雷太。


『みんなに…言わない…で…』

雷太「ふざけんな!言わないでどうするんだ!死んじまうだろ!」


雷太はナツメの手を振り払うと、みんなを呼びに部屋から出て行った。




ーーー
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