愛する君からの贈りもの

□第三話
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花火大会が行われる日ー…

当日、疾風団はたくさんの隊士を集めて会場へ足を運んだ。

紫の隊服に身を包み、警戒区域である神社の周りを囲む。

まだ夕方であるのに、人がたくさん会場に足を運ばせていた。


晴彦「人が多いですね」

時雨「こ、ここに高杉が…現れるんだよ、ねぇ」

雷太「俺がぶった斬ってやらァ!」


やる気満々の雷太に対し、人混みが苦手な時雨は身を縮める。


雲雀「あーれー?ナツメはァ?」

雪智「ナツメさんなら、真選組がいる入口付近に行くと言っていた」

雲雀「えー?もう、真選組なんか相手してないで、僕の相手をして欲しいもんだよォ」


頬を膨らませる雲雀を、雪智は無表情で見つめる。


『悪い、待たせたな』


そこへナツメが急ぎ足で現れると、雲雀は勢いよくナツメに抱きついた。


雲雀「わーい!ナツメェ!」


ぐりぐりと頬をナツメの肩にすり寄せるが、ナツメは構わず晴彦たちの方へ向かう。


『俺がいないうちに、変わった事は?』

晴彦「いいえ、何も。それよりナツメ、真選組へ何をしに行かれたんですか?」

『あァ。近藤に会って来た。近藤達ももう来ていて、警備の体制をとっている』

雷太「なァ、ナツメ。本当に高杉の野郎は来るのか?」

『んー、どうだろうな。来たら頼むぞ、雷太』

雷太「楽勝!高杉なんか秒殺だぜ!」


腰に手を当てて笑う雷太に、ナツメは満足そうに笑う。


雲雀「ねーねー、ナツメェ。夜になる前に、お店見に行って来てもいーいー?」

『もう少し待て。俺も行きてェ』

晴彦「だ、ダメですよ!ナツメ!俺たちは警備に来たんですよ!」


慌てて止めに入る晴彦を、ナツメは横目で見る。


『少しくれェいいだろ。高杉が現れるのは夜に決まってらァ』

晴彦「それでもいけません、ナツメ。貴方は疾風団の団長なんですよ!もっとシッカリ…」

雲雀「うるさい晴彦。少し黙ってよ」


雲雀の痛い目線が晴彦を刺す。

晴彦は言葉を詰まらせた。


『晴彦、お前もたまには祭りを楽しめ。楽しむ事も大切だぞ』

雲雀「そうだそうだァー!」

晴彦「…わ、分かりました」


晴彦は仕方なく頷く。

するとそこへーー…


沖田「久しぶりでさァ、ナツメ」

『そ、総悟…?!』


総悟がニヤニヤと笑いながら、疾風団の前に現れる。

ナツメは総悟の姿を見ると、一気に青ざめた。


『おまっ…!その服…!』

沖田「あァ、着ちゃいやした。どうです?似合いますかねィ」


沖田は着ている着流しをナツメに見せびらかした。

その沖田が着ていた着流しは、沖田の部屋に忘れてしまったナツメの着流しであった。


『か、勝手に着てんじゃねーよ!しかもこんな所で』

沖田「えー、良いじゃねェですかィ。それより、洗濯をしてもナツメのニオイが消えなくて良かったでさァ」

『バカッ!んなデケェ声で…!』

沖田「んー…良いニオイ」


沖田は着流しの袖を鼻にあてるとニオイを嗅いだ。

ナツメは顔を真っ赤にする。


雲雀「え、何。どーゆうこと?」


雲雀が真顔で沖田を見つめると、沖田はパタパタと着流しを見せつけながら答える。


沖田「これはナツメのでさァ」

雲雀「なんでアンタが着てんの?」

沖田「ナツメが俺の部屋に、忘れてったんでィ」

雲雀「アンタの部屋に…?」

沖田「そ。俺とナツメは体をかさっ…」

『ちげーんだ!これはな、この前、真選組で食事をした時に、酒をこぼしちまってよ。それで、サイズが一番合う、総悟に着流しを借りたんだ』

雲雀「…ふーん」


沖田の口を手で押さえながら、引きつる顔でナツメは言う。


『別に怪しいわけじゃねーからな。勘違いするんじゃねーぞ、雲雀』

雲雀「…うん、分かったけど。コイツがナツメの服を着ているなんて、すごーく嫌だッ」

『あ。いや、これな。うん、すぐ返してもらうから』


ナツメは沖田の口を押さえながら、疾風団の前から遠く離れて行った。

屋台の裏に隠れ沖田の口から手を離すと、胸ぐらを掴み上げた。


『なんで着やがる。脱げ』

沖田「ワー。ひどーい、こわーい。脱げなんてエッチィ」

『棒読みで言ってんじゃねーよ。しかもオメーなァ、体を重ねたとか言うんじゃねェ。言いかけただろう?』

沖田「そりゃ言いやすぜィ。言うなって言われてやせんから」

『なら今から言う。絶対にあの事は言うんじゃねーぞ!』

沖田「へいへーい」


軽い沖田の返事にナツメは眉を寄せるが、それ以上は何も言わなかった。


『とにかく脱げ。そして返せ。雲雀に怒られるだろ』

沖田「なんでィ、アイツ。ナツメの事が好きなんですかィ」

『知らねェ。けど、アイツを怒らせるのは一番厄介なんだよ。いつでも良いから、近いうちに返しに来いよ』


その場を立ち去ろうとするナツメの手を引く沖田。


『お、おい。なんだよ』

沖田「もうちょっと二人でいやしょう」

『嫌だ。テメーといると、何かと厄介事に巻き込まれる』

沖田「ん、そんな事ないでさァ」


沖田はナツメを抱きしめると、ナツメの髪に唇を付けた。

一気に顔が赤くなるナツメ。


『やだっ。どけ!』

沖田「どきやせん。…あ、あれ以来、具合はどうです?」

『…あァ。まァ…うん』

沖田「まだ吐いてんのかィ。苦しくて助けて欲しい時は、また俺の所にきなせェ。気持ちよくさせてやりまさァ」

『お前の言い方はいちいち不快になる言い方だな』


睨みあげるナツメに、沖田はニヤリと口角を上げた。


沖田「そんな事ないですぜィ。だって気持ちよかったでしょ?この前のセックス」

『だ!だからそれを…!』


沖田はナツメの顎を上に持ち上げると、己の唇に近づけた。


沖田「またしやしょうね…ナツメ」

『断る。二度としねェ』


沖田の胸を押して抵抗をしているが、ビクともしない。

ギリギリとナツメの歯が噛み合う。


沖田「力、弱ェや」

『うるせっ!』

沖田「こんなんじゃ、他の男にヤられたら逃げられやせんぜ」

『俺はお前以外とはヤらねーんだよ!』

沖田「…へっ?」

『あァ?』


眉を寄せるナツメに、沖田は腹を抱えて笑いだす。

ゲラゲラ笑う沖田に、ナツメの額に青筋が浮かび上がった。


『貴様、何笑ってやがる』

沖田「まって、ちょーウケる。何、お前以外とはヤらねーって。俺とはヤるって事ですかィ?」

『あ?ちげーよ。お前ともヤらねーよ』

沖田「それを言うなら、お前以外の男ともヤる気はねェ。とか、男とヤる気はねェ。でしょ」

『…そうだな。言葉を間違ってしまったな』

沖田「やばっ…何この天然。バカだ」

『う、うるせーな!黙れ!』


ナツメはむきになって怒ると、沖田はようやく笑を止めた。


沖田「あー、今の。録音しとけば良かったでさァ」

『気持ち悪ィ趣味持つんじゃねーよ』


ナツメは沖田を睨みつけると背を向けた。


『いいな、着流しは近いうちに返せよ。で、あの事は言うな、誰にも』

沖田「はいはい、分かってますって」


ナツメは沖田の前から去ると、人混みの中に消えて行った。


沖田「…お前以外とはヤらない、か」






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