愛する君からの贈りもの
□第二話
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パトカーを二台用意し、ナツメ達は真選組屯所へ向かった。
屯所の前では、案内役の山崎退が待っていてくれ、近藤達がいる部屋に案内をしてくれた。
キョロキョロと周りを見回す雲雀に対し、昨日の吐血の事が気になっている雷太。
何事もなかったかのようにナツメは屯所の廊下を歩く。
「ここです」と言われ、山崎がある部屋の襖を開けると、そこには三人の男がいた。
近藤「ナツメくん!!久しぶりだなァ!アレ?身長伸びた?」
手を握ろうとしてくる近藤に愛想笑いをし、適当に座るナツメ。
ナツメに続き、みんなは座布団の上に腰を降ろした。
目の前には顔が整った、美形男子の土方十四郎。
栗色のサラサラヘアーで、まだ幼い顔立ちのイケメン、沖田総悟が座っている。
近藤「ではでは。さっそく自己紹介から始めようとするか。俺が局長の近藤勲。よろしくな!」
近藤は疾風団の隊士に微笑んだ。
近藤「で、こっちが土方十四郎。真選組の副長だ」
土方「…どうも」
土方はそれだけを言うと目を伏せる。
近藤「んで、こっちが沖田総悟。一番隊隊長ね」
沖田「よろしくでさァ」
沖田はナツメの目を見て言い、口角だけを上げる。
近藤「じゃあ、そちらの自己紹介を頼むぞ。ナツメくん」
『あァ。俺が団長の風間ナツメ。で、俺の隣りから順に、副団長の光井晴彦。一番隊隊長の九電雷太。二番隊隊長の山吹雪智。三番隊隊長の鉛山雲雀。最後に、四番隊隊長の水川時雨』
みんなはバラバラに頭を下げると、近藤は笑みを浮かべた。
近藤「よろしく頼む!さて、今度行われる花火大会についてだが…」
『あァ。それに関しては、俺から意見を言わせてもらおう。俺たち疾風団が、神社の周りを警備する。真選組より人数が多いからな。で、真選組が入り口、それに林側も警備をしてもらおうか』
地図を取り出し、指で示しながら説明をするナツメ。
ピクリと眉を寄せる土方。
土方「異論はねェが、お前の言い方が気に食わねェ。確かに人数は疾風団の方が多い。だが、人数で配置を決めるより、どちらがより一般人を守れる腕があるか…で、配置を決めた方がいいんじゃねーか?」
『…なら、俺たちがお前達より剣の腕前が衰えているとでも言いたいのか?』
土方「俺ァ別にそんな事は…」
『いや、そう言っているだろう。俺たちは人数も多ければ、剣の腕前だって自信を持っていると言える。特にここに来ている俺を始め、四番隊隊長の時雨までの剣の腕前は特に優れている。一般人を守れる自信があるからこそ、警戒区域である神社の周りを、俺たちが警備すると言っているんだ」
真剣な表情で言うナツメに、土方は懐からタバコを取り出す。
土方「実力があるのは噂で聞いている。腕前の事もな。しかし、俺たちはお前らの刀を持った姿を、一度たりとも見た事がねェ。素直に信じてやりてェが、難しいだろう」
『…そこまで言うなら、今から交えてやるよ。土方。鞘から刀を抜け』
挑発的な態度のナツメに対し、土方は冷静なままだった。
晴彦「ナツメ。いきなりそんな…」
『黙れ。コイツが先に挑発してきたんだ。俺たちがどのくらい強いか、見せなきゃ気がすまねェ』
眉を寄せるナツメ。
そんな空気を遮るかのように、沖田の細い人差し指が、ナツメの唇に当たる。
『…ッ!!』
驚いたナツメは目を見開き、己の唇に触れている沖田の人差し指を見つめた。
沖田「カリカリすんのはそこまでですぜィ。俺達ァ、アンタらと戦うために、アンタらをここへ呼んだんじゃありやせんぜ」
『…指をどけろ』
沖田「確かに土方さんはバカだから、アンタの気の触るような事言っちまいやしたが…。んなカリカリしないで下せェ。気楽に話しましょうや」
『指をどけろと言っているんだ、沖田総悟。どけねーと噛み切るぞ』
沖田「どーぞ、やれるもんなら」
沖田の指はナツメの唇の間を通り、自らナツメの口内へ侵入させる。
『んぅ…!!』
ナツメの唾液を指ですくい口内から指を戻すと、見せつけるように沖田は指についたナツメの唾液を舐める。
チュルッといやらしい音が鳴り響く。
『なっ…!!』
顔を赤くするナツメ。
その直後、勢いよく雲雀の刀が沖田の顔の横を通り抜けた。
刃先が少し沖田の頬に触れたのか、沖田の頬に血が滲んだ。
雲雀「僕のに触んな…」
沖田「へー。怖いですねィ、アンタ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる総悟。
晴彦「ひ、雲雀!やめなさいっ!」
晴彦は止めるが、雲雀は沖田を睨んだままだ。
『…雲雀、刀をしまえ』
雲雀「…、」
雲雀は無言で刀を鞘におさめると、頬を膨らませて俯いた。
『悪かったな、近藤。騒がせてしまって』
近藤「いや…いやいや!アハハハ!気にしないで話を続けよう!」
重い空気の中、話し合いが進められた。
結局、ナツメの案が通り、神社の周りには疾風団が。
林側と入り口に真選組が警備をする事に決まった。
『では、当日はこの配置で頼んだぞ、近藤』
近藤「おう、そうだな。ナツメくんも頼んだぞ!」
近藤はナツメの肩を叩こうとしたが、雲雀の目線に気づき、手を降ろした。
『では、俺たちはこれで』
近藤「あっ!待ってくれ、ナツメくん」
『…はィ?』
ナツメが部屋を去ろうとした所を、近藤が止める。
近藤「久しぶりなんだし、どうだ?晩飯でも一緒に食わないか?」
『…いや、いい。遠慮しておく』
近藤「そう言わずにさァ!ナツメくんのぶんの酒も用意してんだ」
『えっ…』
ナツメは困った顔をしたが、仕方なく頷いた。
近藤「よし!じゃあ夜にまた来てくれ。待っているから!」
『…あァ、分かった』
しぶしぶ了解したナツメは部屋から出ると廊下を歩いて行った。
ナツメを待ち伏せていたかのように、沖田が廊下の隅に立っている。
ナツメはなるだけ沖田を見ないように通り過ぎようとした。
沖田「アンタの唾液、なかなか美味しかったですぜィ」
『…は?』
眉を寄せて沖田を見つめるナツメ。
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