貰いもんはいらなくても貰っとけ

□第三話
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その晩ー…


『…クッ…うぅ…うっ!』

嘉禄「う、うゆくん!!」


麻酔が切れたうゆが目を覚まし、背中の痛みに顔を歪ませた。

嘉禄はうゆの顔を覗くと、また目に涙を浮かばせる、


『…嘉、緑…』

嘉禄「うゆ、くん…うゆくん…良かった…よかっ…良かったァ」


ポロポロと泣き出す嘉禄の涙が、うゆの顔に落ちて流れる。

そんな嘉禄の泣き顔を見て、うゆはそっと手を伸ばし、嘉禄の頬に触れる。


『泣くな…嘉禄』

嘉禄「うゆっ…うゆくんがっ…死んじゃうって…思ってェ」

『ふん…死なねェよ…お前らを、残して…さ』

嘉禄「うゆ…うゆくんっ!!」


うゆの体に勢いよく抱きつく嘉禄。

全身に激痛が走るが、うゆはそっと嘉禄を抱きしめた。


『悪かった…心配、かけさせて…ごめん、な…』

嘉禄「うゆくんが…生きていてくれて、良かった。僕、それだけで…嬉しいよ!!」

『…嘉禄、』


うゆはそっと緑色の嘉禄の髪の毛を撫でる。

そのまま嘉禄はうゆの隣りに体を横にして瞼を閉じた。


嘉禄「…うゆくん、今日だけ…甘えてもいい?」

『怪我人の、俺に…甘えるなんて…とんだワガママ野郎、だな…』

嘉禄「…ごめんなさい。でも俺…本当に心配で…」


そこでニオイに敏感なうゆが、嘉禄が血のニオイに染まっている事に気づく。


『…嘉禄、怪我…してない、か?』

嘉禄「してないよ。うゆくん。僕は大丈夫だよ」

『そうか…ここへ、来い。嘉禄』


うゆは布団を持ち上げ、ポンポンと隣りを叩いた。

嘉禄は満面な笑みになると、うゆの布団の中に潜り込む。


嘉禄「ありがと!うゆくん!」

『今日だけ、だからな…甘えたが…』

嘉禄「うん。今日だけ…今日だけ僕も悪い子になるね」

『ははっ…なんじゃ、そりゃ…』


嘉禄はうゆの腕にしがみつくと、頬をすり寄せる。


嘉禄「うゆくんを独り占めする、悪い子になるって事だよォ」

『ふん…それは悪い、子だな…お仕置きが必要…だな、嘉禄』

嘉禄「ええーっ!ごめんなさい、今日だけ許して、うゆくん」


嘉禄を見てうゆは微笑むと、そっと嘉禄に布団を掛け直した。


『ゆっくり、寝るんだ。嘉禄。今日は…ありがとう、な』

嘉禄「いいえ。僕はうゆくんのためなら何でもするよ?」

『…ふっ、そうか。頼もしい、奴…だな。嘉禄は』

嘉禄「ふふっ。そうでしょう?」


頬を染めて笑う嘉禄に、うゆもつられて微笑む。


『寝よう…体を、しっかり…休めるんだ。分かった、な?』

嘉禄「はい…うゆくん」


嘉禄は瞼を閉じると、すぐに眠りについてしまった。

嘉禄の寝顔を見たうゆも、すぐに夢の中へ落ちて行ったー…






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