貰いもんはいらなくても貰っとけ

□第三話
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山崎「局長ォォォオオオ!!」


山崎は近藤に近寄ると、近藤にしがみついた。


山崎「お怪我ありませんか!局長!」

近藤「あァ、平気だ。ありがとな、ザキ」

山崎「きょ、局長…」


涙目になる山崎の頭を撫でる近藤。


『クッ…ざけん、な…』


背中から大量の血を流しながら、うゆはゆっくりと立ち上がる。

うゆの背中を斬った赤い刀と、自分の刀を持つうゆは近藤と山崎にそれぞれ刃先を向ける。


『テメーらに…俺の気持ちにゃ…理解できね、だろ…グハッ』


口からも血を吐き、口の端についた血を袖で拭ううゆ。


『この芋侍が…ふざけた真似を…幕府の犬、に…なり、やが…て…』

近藤「お、おい!落ち着け、鬼頭!」


うゆは二本の刀を振り上げると、そのまま近藤と山崎に向かって振り下ろした。


『死ねェェェェエエエ!!幕府の犬どもがァァァアアア!!!』


カキンッ!!

振り下ろしたはずの刀が途中で遮られ、ギリギリと音が鳴る。

ハッとしたうゆは、その刀にさらに力を加えた。


『テメー、なんの真似だ……銀時』


うゆの刀を遮ったのは、あれほど来るなと言った銀時だった。


銀時「あぶねーもん振り回してんなァと思ってよ」


銀時は軽々とうゆの刀を木刀で振り払うと、眉を寄せた。


銀時「なーにやっちゃってんの、うゆさんよ」

『黙れ。真選組の…味方をするなら来るなと…言った、だろ』

銀時「だからァ、銀さんは真選組の味方も、オメーら鬼襲隊の味方もしてねーっての」

『っざけんな…ならなぜ、ならなぜ!!止めたんだ!銀時!』

銀時「あ?分かるだろ。あぶねーもん振り回してるテメーが、今にも死にそうだからだよ」


それを聞いたうゆの手から刀が落ち、ふらりと倒れる。

それを支えるかのように、銀時はうゆを抱きしめた。


銀時「おい、バカだろうゆ。本当に死んじまうぞ」

『うっ…せ。なんで…止め…』

銀時「もう無理だって、うゆ。今日はテメーの負けだ、一旦引きやがれ、うゆ」

『バカ…やろ。引けるわけ…』


うゆは銀時の着流しを掴むと、苦しそうに唸る。


『う…うぅ…』


銀時は自分の着物をうゆに巻きつけると、そっと抱き寄せた。


銀時「ジミーくん。派手に斬ってくれたねェ、うゆの背中」

山崎「だ…旦那。アンタもしかして鬼襲隊の…?」

銀時「まさか。ただの昔の顔馴染みなだけだって」


銀時はうゆを抱きかかえると、近藤に背を向けた。


銀時「…近藤さんよ。俺から謝っとく。すまねぇな、テメーらを襲っちまって」

近藤「…」

銀時「…だがな、近藤さん。コイツァ、こーゆうやり方しかできねーんだ。…苦しんでんだよ、世界を巻き込むほど…」


近藤は銀時の背中から目を離す事なく、ただじっと見つめていた。


銀時「…悪いね、近藤さん。今回は何も見なかった事にしといてくれ。うゆは隊に返す。もちろん他の連中もだ」

近藤「万事屋。テメーの頼みだと思って受け入れる」

銀時「…あァ、そうしてくれ」


銀時はうゆを抱きかかえたまま、その部屋を去って行った。

廊下を歩いている最中、うゆはずっと下唇を噛みながら銀時の腕を掴んでいた。


銀時「うゆー。銀さん腕痛いんですけどォ。取れちゃうよ、腕」

『…銀、と、き』

銀時「…んー?どうした、うゆ」

『…せん…せ、せん…い』

銀時「…ん、」


銀時はその場で足を止めると、何かを言いたいうゆの顔を見つめた。


『せん…い…会い…た…い』

銀時「…あァ、会いてェな」

『せ…せい…せん…せ…』

銀時「わーかった、分かったから。な?うゆ。」


銀時はうゆの額に、自分の額をくっつけると小さく笑った。


銀時「瞼を閉じなさい。うゆ、みんなの所に連れてってやるからよ」

『…ぎ、…とき…』

銀時「んー?今度はなんですかー?」

『……ご、…めん…な』


その言葉を聞いた銀時は、何も言わずに外へ歩き出したー…





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