橙色の彼女
□第8話 「なんで…あんな嘘をついたんすか?」
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青峰side
試合が終わった。
もちろん俺の勝ち。
当たり前の結果だ。
ふと栞の顔を見た。
泣いてるかと思ったが…泣いていなかった。
そう言えば、あいつの泣き顔は二回見た事がある。
一回目は…俺があいつに告白をした時。
嬉し涙ってやつ?
二回目は…
『さようなら。』
俺が悪かった。
少なくとも傷つけていた。
だが、謝ろうとした時にはもう…
栞はいなかった。
もう会えないだろう、そう思っていた…が、
雑誌に写っていた栞。
俺の知っている栞のままだった。変わってる所といえば、髪が伸びたくらいだろう。
中学時代を思い出した。
本当に楽しかった。
あの時はバスケだって…楽しかった。
俺が狂っちまった事が原因なのはわかる。だがよ…お前が俺を何度もあの頃の俺に戻そうとしても無理なんだよ。もうわかっちまったからよ。
俺に勝てるのは…俺だけなんだ…
俺はすぐに帰る支度をしてすぐにその場を後にした。
なんとなく…
この場から、離れたかった。
会場を出ると目の前に
オレンジの髪を揺らしながら遠くを見つめている
栞を見つけた。
「よぉ…栞。」
『なっ…青峰君…』
なんだよ、その青峰君って。
昔は大輝って…呼んでくれたじゃねぇか。
苗字呼びになっただけでこんなにも遠く感じるなんてな。
「なんでここにいるんだよ。」
『…それ、貴方に言わなきゃダメなのかしら?』
「……なぁ、お前はあの時の事で怒ってるんだろ?あれは俺が悪かった。」
一瞬、
栞の目が見開いたがすぐに冷たい目つきに変わった。
『別に…どうでもいい…』
「なら!」
『でも無理よ。もうあの頃には戻れない。…あの頃の貴方はもういないから…無理よ。』
そのまま栞はまた会場の中へ戻って行こうとした。
「おい!待てよ!俺はまだお前の事が好きなんだよ!!」
『そう…でも残念。私…私、大ちゃんの事が好きなんだ。』
…は?
俺の中で時間が止まった。
「大…ちゃん?」
『そう、火神君。彼から告白もされたの。返事を出さなきゃいけないんだけど…私、火神君の事が好きみたいだから良いよっていうつもり。だから…もう付きまとわないで。』
そして…会場の中へ消えていった。