カラフルDay'S

□35.「あのな、清志。俺だって……俺だってな……鬼じゃねーんだよ」
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「……宮地……せんぱ…」


「……………」


……ちょっと待て


今、コイツなんて言った?


「何故、そんな事を聞くのですか?」


「……それは…」


……やめろ、清志


お前の口から…聞きたくねぇ














こんな形で、聞くたくねぇよ


























『1本、決めるぞ!』


はーい、茜でーす


只今絶賛試合中でございまーす!


「……っ!」


ダンッ!


私は目の前の相手を素早くかわし、そしてそのボールを大我にパスをした


「オラッ!!!」


ガゴンッ!とものすごい音を立てながらゴールにダンクシュートをする大我


決まった瞬間メンバー全員がガッツポーズをした


「虹村先輩ってPGもいけたんすね!」


「意外だよなぁー……つーか、むしろこっちの方が合ってね?動きめちゃくちゃ良いじゃねーか」


「先輩はどのポジションもできるというわけか……さすがとしか言えないのだよ」


「……………」


「……赤ちーん?どーかしたの?」


コートを見つめながら全く何も喋らない赤司に紫原は首を傾げながらお菓子をパクッと食べた


「……いや、なんでもない…」


そう言って紫原に微笑むがまた真剣な顔をしながらコートを見つめるのだった


「…………あ、」


黄瀬が何かに気がついたのか、空を見上げながら「ヤバイっす!」と言った


「今ポツッときた!雨が降るっすよ!!」


そう言ったのと同時に突然ものすごい量の雨が降り出し、慌てて周りの人達は屋根のある場所に駆け込んだ


「雷まで鳴り出したわね…これはもう中止かも…」


リコが残念そうに身体についた水滴を拭きながらため息をついた


「アレ?」


「どうしたの?鉄平」


「虹村が……いない」


「え!?!?」


皆で周りを見渡すが……確かに見当たらない


「もしかして逸れちゃったかな…沢山の人がここに駆け込んだから!」


「あの、さっき虹村さんがちょっと用があるとかで急いで帰ると」


赤司がリコにそう言った


「え、そうなの?」


「はい。雨も止みそうにないですし、今日はこのまま解散ということで俺も先に帰ってもいいですか?」


「赤司君も用かしら?えぇ、そうね…雨も強くなるばかりだし…仕方ないわ。今日はこのまま解散しましょ!」


「お前達、すまない。俺は先に帰らせてもらうよ」


「うん、バイバーイ赤ちーん」


紫原が手を振り、他のメンバーも別れの挨拶をすると、赤司は雨の中走ってどこかに行ってしまった

































『…………………困った』


私はみんなと少し離れた場所にいました


何故かって?


それは……







ゴロゴロゴロ………


『……うっ…』


雷の音に私はまた小さくなった


私は小さい頃から雷が苦手。どうしても音を聞くと反応してしまいます…


『今お兄ちゃんの姿で雷にビビっている姿を見られたら…バレちゃうよな…』


はぁ……とため息をつく


雨は止む気配がなし


雷もいつ鳴るかわからない


『適当に理由つけて先に帰ってもらうしかないかな』


携帯を取り出した瞬間、聞こえたのはお兄ちゃんの名前を呼ぶ声


「虹村さん」


『……っ!あ、赤司…!?』


嘘……!?


征十郎!?!?


な、なんで……ここに……!?


「少し見つけるのに手惑いました。急にいなくなって…本当に心配したんですからね?」


『あ……あの…よ……それは…』


「雷怖いんですよね?」


『え……』


「茜も確か…雷が怖かったはず」


『……っ』


「雷が怖いなら素直に俺に言えばいいのに。皆に気をつかう必要ないんですよ?まぁ、こうしなければならなかった理由があるんですよね?虹村さん…………いや、茜」







『え……』


今……私の名前を呼んだ…よね?


『いや…あの…』


「いつもとなんだか様子が違うな、とは朝から感じていたんだ。なんだか虹村さんじゃないような…別の誰かの様な気がしていた」


『……う…』


……やっぱ、バレちゃうか…


「それがさっきのバスケを見て確信に変わった。俺と同じポジションであるPG……中学の時、一緒にバスケの練習をした仲である俺に見抜けないわけないだろ?」


『…………だよね。やっぱ征十郎には隠せないか…』


私は顔を上げると、ニッと笑った


『信じられないかもだけど、私とお兄ちゃんの身体が入れ替わっちゃってさ。お兄ちゃんの姿だけど、心は正真正銘の虹村茜だから』


「まぁ驚くが……現に起こってしまったわけだからね。で?何故そうなってしまったんだ?」


征十郎が不思議そうに聞くと、私はとりあえず朝あった出来事を順番に説明した


「……なるほどな、桃井の料理はそこまで進化していたか」


『進化というか退化というか……もう兵器だよね』


征十郎と一緒に盛大なため息をした私は鞄の中から鏡を取り出した


『このまま…元に戻らなかったらどうしよう…』


鏡に写った自分の姿を見つめながら、私はボソッと呟いた


「それは……俺も困るな」


『え……?』


「茜に伝えたい事があるのにな……虹村さんに伝えるわけにはいかないし」


『私に……?それは何??』


「ふふ……まだ秘密だ」


『えええー!?』


別に今私がここにいるんだからいいじゃない!!っと言うが、征十郎は秘密、と言うだけ


『仕方ないなぁ……』


「そこは我慢してくれ。まぁ……安心しろ。俺が必ず元に戻してやるからな」


『征十郎……』


征十郎にバレてしまった時はどうしようかと思ったけど……


やっぱりとても頼りになるなぁ……


『私が困っている時……いつも征十郎が助けてくれるよね』


「困っている人を助けるのは当たり前だろ?それが茜なら尚更だ」


征十郎は優しく微笑んだ



















“茜、しっかりするんだ”


“征十郎……?”


“大丈夫だ。きっと良くなられる。虹村さんもそう言っていたのだろう?”


“でも……”


“虹村さんの為にも……茜はバスケットを続けるべきだ”



















いつも助けてくれた。そばにいてくれた


『ありがとう』


私は貴方にどう感謝したらいいのだろうか


私は……………






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