橙色の彼女
□第5話 『もう私たちは終わったんだよ?今更掘り返さないで』
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『涼ちゃん待ってよ!』
「急がなきゃ試合が始まっちゃうっすー!」
今日は誠凛対桐皇。
「…本当に来て大丈夫なんすか?」
『データを取るためだよ。インターハイであたるかもじゃん?』
「そうっすけど…」
黄瀬は栞が心配でならなかった。
中学時代
栞と青峰の間にあった出来事。
その全てを知っているからだ。
「…ん?あれは…」
『真ちゃんじゃーん!』
「んなっ!何故バレたのだよ…」
「恥ずかしいからそのサングラス、速攻外して欲しいっす。」
『真ちゃんも来ていたんだね?』
「たまたま通りかかっただけなのだよ。」
「で…どーすか試合は?」
「どうもこうもない。話にならないのだよ。青峰がいないようだが…それでもついていくのでやっとだ。」
「青峰っちいないんすか!?」
『…!?』
「まぁ…大丈夫っすよ。あの2人が…」
「忘れたのか黄瀬。桐皇には桃井もいるのだよ。」
「!!」
「あいつはただのマネージャーじゃないだろう。中学時代何度も助けられた。つまり…」
『敵になると…厄介ね。』
「まぁ今までは栞との連携だったがな。」
『さっちゃん…』
さっちゃんこと桃井さつき。中学時代は同じマネージャーで仲もかなり良かった。先読みDFは私が細かい情報を入手し、それをさっちゃんが解析していた。
『まぁ私が情報提供してなくてもそれなりにさっちゃんも自分で集めて作ってるだろうし。たしかに厄介だね。』
だけど…
『この先読みDFには突破口がある。まぁそれは誠凛さんだから…だけど。』
「えっ!?…あ、今シュート入ったっす。」
『データはね、より多く、より正確にあったほうが良いの。』
「そこで黒子と火神か。」
栞は頷いた。
『テッちゃんは予測困難、火神君は発展途上。ここに突破口がある。ただ…』
キィィィ…ン…
『…火神君、無茶してるわ。このままじゃ試合、もたないわよ。』
「なっ…!?」
『まぁ向こうの監督さんも気づいたみたいね。…ちょっと飲み物買ってくるね!喉乾いちゃった。』
栞は走って会場の外の自販機に向かった。
行かなきゃ良かった。
「よぉ。本当に帰って来てたんだな。」
『な…んで…』
「何でって、そりゃ試合だからに決まってるだろ。」
会ってしまった。
1番会いたくなかった人に。
会ってしまった…
「なぁお前さ。何でアメリカに行ったわけ?」
『関係…ないじゃない。』
「はぁ?関係ないだと?お前が勝手に行ったって聞いて俺は『ふざけないでよ!』」
もうヤダ…誰か助けて…
『やめて…関係ない。もう私たちは終わったんだよ?今更掘り返さないで。』
走った。
全速力で。
走って走って走って走って走って…
「栞!?」
『涼ちゃん…』
「どうしたんすか?痴漢に追いかけられたんすか?ってか飲み物結局買ってないじゃないっ…て、栞?」
ビー!
ー桐皇学園、メンバーチェンジです…
結局、誠凛は負けた。
圧倒的な差で。
そしてインターハイへの道も閉ざされたようだ。
海常の誠凛へのリベンジは果たせなかったけど
今はそれどころじゃない。
正直…
私は怖かった。
会ってしまった。
あいつが…
怖かった。