ごちゃ混ぜ短編集

□校庭の真ん中で
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『おはよ!和成!』


「あ…おう…」


『…?』


変だ


『和成ー次の移動教室一緒に行こう!』


「あぁー悪りぃ…先に行っててくれ」


『……うん…』


やっぱり、変だ


いつもなら和成から
「おっはよー☆ナナ子!」
「次の移動一緒に行こーぜ!」


って言ってくれるのに…今日は言ってこないばかりか、私から声をかけても素っ気ない返事が返ってくるだけだった


『私…悪い事したかな…』


今日は機嫌が悪いとか?
まぁこんな日も和成にだってあるだろう。とりあえずほっとこう!そう思った


……しかし、


『なんでよ……』


他の男子生徒や……じょ、女子生徒にはニコニコいつも通り喋っていた


私だけ?!


納得がいかない。まさか…嫌われた?


『…ってわけなのよ。どー思う、真ちゃん!!』


「知らないのだよ!」


和成がいない時を見計らって仲良しの真ちゃんに相談する事に


『だっておかしくないっすか!?他の女とは仲良く喋っちゃってるくせにさ、私には冷たいんだよ?しかも急によ急に!!』


私…一応彼女なんだよ……


とベソをかいている様子を見た真ちゃんは呆れたようにため息をつくと


「大丈夫なのだよ。高尾は心底お前に惚れていたからそんな簡単に乗り替えるわけないのだよ」


と言いながら眼鏡をかけ直す


『結構恥ずかしい意見ありがとう……そう、だよね。もう少しあいつを信じてみるよ』


ニコッと真ちゃんに笑うと真ちゃんは少し顔を赤くしながら


「まぁ……また何かあったら相談くらいはのってやるのだよ」


『ふふ…ツンデレ乙!』


「なっ…!?」


と、いう事で様子を見る事に


しかしお昼を過ぎてもやはり変わらず。席の周りの女の子にはペラペラ話かけているのに私には見向きもしない


周りの女子も流石に私達の関係がおかしいと思ったのか……なんだかヤケに和成へのボディータッチが多い。一応モテるもんなー和成


『…………和成のバカッ…』


もう知らない


そして私のテンションは最悪のまま、午後の授業が始まった


はぁ…とため息をついたその時、突然和成が手を上げた


「先生ーすんません。腹痛いんで保健室行って来ます」


「おう、そうか。大丈夫か?えーそれじゃー保健委員の…」


大丈夫かな、和成……


なーんて思ったのもすぐに消えた


「一人で行けるので大丈夫です」


そう言うと和成はさっさと教室を出て行った


何、あれ


あぁーちなみに私が保健委員


『………本当に嫌われちゃったのかな…』


先生の話も全く耳に入らないまま、まるで死んだようにボーッとしてると……突然携帯が震えた


『ーっ!?』


バイブにしてあったため、誰にも気づかれてない


私は気づかれないようにコッソリ開くと画面には「和成」の文字。一瞬ドキッとした後、恐る恐るメールボックスを開く


“窓の外見てみ”


『………窓の、外?』


ちょうど窓側の席であった私は軽く身を乗り出して外を見る


そして……目を見開いた


校庭には石灰で書かれた大きな文字


“お誕生日おめでとう”


『先生っ!!』


「っお!?な、なんだ…名無士」


『お腹痛いので保健室に行ってきます!』


「お、おう…そうか…では…っておい!名無士!?」


先生の話なんか最後まで聞かずに私は全速力で校庭に向かう


校庭の真ん中には…彼がいた


『和成っ!!』


「うぉっ!?来ちゃったの!?」


私の登場にビックリした反応の和成は私が知っているいつもの和成だった


「ビックリした?すっげー頑張ったと思わねぇ?」


『………バカ…』


「へ?」


『和成のバカァァァァァーっ!!うわぁぁぁーん!!』


「お、おいナナ子?!」


色々溜まっていた何かが一気に噴き出てきた


『誕生日…覚えててくれたんだ…』


「当たり前だろー!俺が忘れるわけないっしょ!」


『………今日冷たかったじゃん…』


「あれはーよくあるじゃん。誕生日なんか忘れてます風を装って相手が落ち込んでいる所で…おめでとーっ!的なやつよ」


『……やっぱり和成はバカだよ…』


涙でグチャグチャになった顔のまま和成を睨みつける


『私、嫌われたと思って本気で心配してたんだけど!』


「あぁいや、それはサプライズで…」


『……でも心配した。悲しかった。和成に……嫌われたかもって…』


また泣きそう…


流石に和成もやり過ぎたと思ったのか、私を強引に抱きしめ、ゴメン…と謝った


「ナナ子が好きだ。これはマジだから。やり過ぎたよな…こんなに心配してくれるとは思わなかったんだ…」


『……本当?』


「あぁ、好き。ナナ子に俺、マジで夢中だもん」


和成はそのまま私の顔にゆっくりと近づくと……唇に柔らかいものがあたった














ーーー校庭の真ん中で





「仲直りのキス、そんで改めておめでとさん」


『……まぁ結果的には嬉しかったし、特別許してあげる』


「やっほーい!流石俺の彼女!あぁー大好きだわー」


『あっちょっと和成!そろそろ戻らなきゃ…まだ授業中…』


「コラァァァァァァァァァァ!!高尾!!名無士!!何やってんだぁぁぁ!!」


「げっ!見つかった!!」


『そりゃ校庭にこんなデカイ字が書かれてりゃわかるわ!…って和成!?』


「よーしこうなったらズラかるぞ☆行くぞナナ子!!」


「どこに行くんだお前らぁぁぁぁぁ!!」






(……全く、世話が焼ける奴らなのだよ…








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