ごちゃ混ぜ短編集

□放課後の教室で
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『ごめんテツ君……あれ?』


放課後


私は先生に職員室に呼び出されていた。理由は…進路


実を言うとそこまで行きたい、と思えるような高校が無い。かと言って、別に高校に行きたくないわけでも無い


だからなかなか高校名を書けずに進路の紙を白紙で出したら担任に呼び出された、という所だ


はぁ……


と、一つ私はため息をつくと


手に持っていた名前しか書かれていない紙を見つめた


来週までに提出しなければならないその紙は正直、今すぐ丸めて捨てたいくらい私にとっては面倒極まりない紙きれだった


『どこに行っちゃったのかな…あ……』


クシャッと丸めてゴミ箱……では無くポケットにその紙を突っ込むと私は愛しいあの人がいるであろう場所に走って向かった


『見つけた……』


「見つかっちゃいましたか」


誰もいない教室に1人、その人は読書をしていた


『テツ君が行きそうな場所なんて私にはお見通しなんだから!』


「ふふ……さすがです、やっぱりナナ子さんには敵わないですね」


テツ君は大きな目をゆっくりと細め、私に微笑んだ


テツ君はバスケ部………だった


ウチのバスケ部は超強豪でレギュラーなんてそうそう取れない。その中でテツ君はレギュラーだった


私はそのバスケ部のマネージャー………だった


「結構時間かかりましたね。大丈夫ですか?」


『うん、まぁね……』


テツ君がバスケ部を辞めた理由は直接聞いてないけどなんとなく、わかる


私はテツ君の口から辞める話を聞いた時、何も聞かずに黙って頷いた。そして私も、辞めた


私が辞めた理由は簡単だ。テツ君を支えたい。それだけだ


「ナナ子さん、何かポケットから落ちましたよ?」


『………ゲッ!』


私のポケットに無残に突っ込まれていたあの紙はいつの間にか床に落ちていたようだ


テツ君はそっと拾い、その紙を広げる


「………これは…ナナ子さんまだ決まって無かったんですか?」


『ん……まぁ……』


テツ君は小さくため息をつくと綺麗に折りたたみ私にそれを渡した


『テツ君はスポーツ推薦でしょ?』


「いいえ」


『……え、だってテツ君はバスケ部でレギュラー……だったじゃん…』


喋りながらなんとなく触れちゃマズイ事を言っている気分になった


「僕は彼らのような天才じゃありませんから、推薦もありません。だから普通に受験をしようと思ってます」


『そ、っか……』


やっぱりテツ君ももうどこの高校を受験するか決めてるのかな……


テツ君と、離ればなれは、ヤダな


「……ナナ子さん?」


『ーーっ!あ、ごめんごめん!ちょっとボーッとしちゃった……私はどうしようかな。テツ君みたいに特別やりたい事とか無いしさ……』


「では僕と同じ高校へ行きませんか?」


『………え…』


優しく頬笑むテツ君


「ナナ子さんのこれからの事なのであまり一緒の高校に行こうとは言わないようにしてたんです。ナナ子さんを困らせたくなくて。でも……何をしようか迷っているならまた、僕の隣で僕をサポートしてくれませんか?」


『テツ君………』


私の目に涙が浮かぶ


「正直、ナナ子さんと離れたくありませんし…ずっとこれから先も僕の側にいて欲しいです」


テツ君は優しくわたしの涙を拭き取ってくれた


私も、側にいたい


『うん…うん…!私も側にいたいよ……!ずっとずっとずーっと!』


「じゃ…決まりですね」


テツ君の顔がゆっくりと近づく














ーーー放課後の教室で





『テ、テツ君……///////』


「ナナ子さんの笑顔も泣き顔も、そしてキスをしていいのも彼氏である僕の特権ですから」


『もう……/////…あっ…そうだ、教えてよ。テツ君が受ける高校の名前』


「あぁ、そうでしたね。僕は………」










「誠凛高校を受験しようと思ってます」








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