黒バス-short-
□紫陽花
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黒子は綺麗だ。
色素の薄い水色の髪は空を思わせ、それと同じ色を持つ瞳を見れば吸い込まれそうになる。
肌は白く陶器のようでそれだけで綺麗だが頬が上気し、赤く染まったときにはもう……雪の中に咲く椿のように凛として美しい。
でもあいつは冷淡だ。
例え俺が他の人と楽しそうにしゃべっていようと、女としゃべっていようと本から目を外そうとしない。
嫉妬の顔一つ見せようとしない。
それがなんだか悔しくて……でも嫌いになれるはずなくてずっとモヤモヤしていた。
そんなある日。
「火神くん。ちょっといいかな?」
隣のクラスの女子に俺は呼び出された。
確か、藤堂……って言うやつ。
「なんかようか?」
「ここじゃ言えないから屋上に来てもらっていい?」
「?……ああ。」
周りのクラスメイトから冷やかしのような声が聞こえたがそれを無視して屋上に向かった。
屋上には青空が広がっていてその青空はあいつを思わせた。
「で、なんだ?」
「私ね、ずっと前から火神くんのことが好きだったの……」
顔を真っ赤にして俯きがちに藤堂はいう。
「私と付き合ってください。」
告白……か。
どう断るのかはよくは知らねぇけど……。
「ごめん。俺、好きな人いるから」
俺はそう言った。
藤堂は一瞬顔をしかめたがそのあと儚げな笑顔で笑った。
「そっか……わかった。急に呼び出してごめんね。私の気持ち聞いてくれてありがとう。」
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ほら、これ使え。」
ハンカチを渡すと藤堂は完全に泣き出した。
「もう。フった女子に優しくするとか反則だよ……っ」
「ごめんな藤堂。」
「ううん。」
「それ、返さねぇでいいから。」
俺は屋上を後にした。
「火神くん。」
屋上からの帰り黒子が俺を呼び止めた。
「さっきの子って?」
「告白された。」
「…………そうですか。」
「もちろん断ったけどな。」
「当たり前です。火神くんは僕と付き合ってるんでしょ。」
その言葉を顔は真っ赤だ。
「僕だって妬くんですよ?」
「そっか。」
「いつも妬いてるんですよ?」
それだけ言うと黒子はその場を去った。
訂正する。
黒子は綺麗だ。
でも、黒子は冷淡ではない。
黒子は冷淡なふりをしてるだけだ。
そんなあいつが更に愛しくなった。