心頭滅却 BOOK

□04
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試合当日。

私たちは電車で目的地に向かう。
そこに黒鉄と主将はいない。


「まじふざけてるくない?私なんもしてない系なのに」
「普段の行いが悪いからだ」
「普段の行いのどこが悪い」
「全体的に」
「…」


ここまで私に因縁つけてくる相手といったら決まっている。

"葉桜 士道"

私がもっとも苦手とする(というか嫌い!)な人間である。


「お、抑えて抑えて!」
「ツバメの馬鹿!」
「馬鹿はお前だ」
「うるさいっ!」


ツバメを挟み、睨み合う。
電車の座る席、どう考えても間違えてる。


「ツバメ!席替えない?」
「え、でも、あいてる席ないよ?」
「えー…」


あたりを見まわした。
本当にあいているところがなかった。


「なんでぇ…」
「いいじゃない!それよりこれ見ようよ〜!」


ツバメが一緒に見ようと誘ってきたのは剣道誌だった。


「「高校剣道」春シーズンいよいよ開幕……。当編集部は今年も格強豪に取材を試みたが王者落陽の情報は一切得られず…。ふーん、変わったとこなのね---落陽って」
「何だソレ」


落陽ってそんな変なところだったんだ。
いかなくてせーかいだったのかな。


「落陽の情報は一切でてないけど……。白零の特集はあるわよ!」
「!ほんと?見せて見せて!」


さっきまでなんの興味もなかったが、白零という単語がでてきてから興味が沸いた。


「言わずとしれた"剣聖"夜鷹を中心に…他行なら間違いなくエース級の三年烏堂。童子・鎧坂の二年コンビも昨年より磨きをかけ-----。更に大物ルーキー大狼の加入により磐石の布陣……。今年こそ落陽の対抗馬になるか!?…だって!!」
「…大狼か」
「知ってるの!?」
「…お前東京だろ。覚えてないのか」
「と大会の決勝はいつも俺とアイツだった」
「ああー!名前はなんとなく…。どんな人だった?」
「…強い。野獣みたいな奴だった」


ツバメの問いにそう答えた葉桜。


「ワンコはワンコだよ」
「?ワンコ?」
「空はワンコなのーって言ってるの」
「空って?」
「大狼です!なんで苗字じゃなきゃ分からんかな」
「へ〜、名前呼びってことはぁ、仲、いんだ?」
「うん。仲いいよ」
「士道くんより?」
「どうしてそこで葉桜がでてきた」
「そこはスルーで!それでどうなの?」
「そんなの決まってるでしょう」
「…はぁ」


ため息をつかれたが私は悪いことはなにもしていないからな!


ブーッブーッ


誰かの携帯の着信音がした。


「うるさいなぁ」
「まなーもーどにはしてるが」
「電源ぐらいきれっての」
「まなーもーどが普通だと思う」
「私が個人的に嫌なの」


もちろん、マナーモードで十分だと思う。
いちゃもんつけてるだけだ。


「葉桜っておもしろいね」
「「は??」」


おもしろーい。
ツバメと葉桜もさらにおもしろーい。


「ケータイつかうのにギクシャクしすぎ!」
「奏ちゃん!たしかにそれは私も思ったけど…。いっちゃいけないことといいことがあるでしょ!」


我に返ったツバメが注意をしてきた。
結局はかわいそうだから馬鹿にするな、ということだろう。


ズーン…。


「ご、ごめん。葉桜言い過ぎたわ!んな落ち込むなって!」


いきなり落ち込みすぎだろ!
なに?
私の指摘、そんな棘あったか?


「…先輩、黒鉄…先についてるそうです」


先輩にそう報告する葉桜。

あれ?葉桜って…


「黒鉄のメアド知ってたんだ」
「めあど?」
「…メールアドレス」
「あぁ…、まぁ、一応な」


葉桜には1から10教えにゃならんのか。


「ともだ…いや…なかま…?てき…?いや---…ライバルだから…な」
「…ふぅん」
「…そっか」


ライバルはいいと思うよ。
だから私も悪いイメージは持たなかったよ?
でもね、でもね。
よーく、考えて見て。
誰か大切な存在を忘れてない
か?



「私は?ねぇ」
「…お前が、どうした」
「ライバルだよね?ね?ね?」
「…は」
「ライバルだよね?ねぇ?」
「馬鹿をライバルにするほど俺も馬鹿じゃない」
「ツバメ〜」
「う、うん…」


ほらみろ。
ツバメが呆れてるじゃないか。
葉桜がいつものように私を貶すから!


「じゃあ、葉桜。ケータイ貸して」
「理由は」
「黒鉄のメアドを登録ッすから」
「…そうか」


携帯を渡された。
私は自身の携帯もとりだし、慣れた手つきで登録をした。


「奏ちゃん…、ケータイ持ってたんだ…」
「母が持ってろって言ってきたんだよね」
「私も奏ちゃんのアドレス登録しても…」
「OK、ついでに黒鉄のもしちゃえ」
「ちょ、奏ちゃん…!」


ツバメのケータイに自分のメアドを登録した後、ツバメのケータイに黒鉄のメアドを登録した。

顔真っ赤で可愛いよ。ツバメ。


「な、なら!士道くん!」
「…なんだ」
「アドレス登録してもいいかな!」
「…好きにし
「ということだからーぁ!奏ちゃん携帯かしてねッ!」
「ツバメ!」


私がニヤニヤしながら持っていたケータイをツバメが上からとった。

なんでだよ!
ツバメのケータイに葉桜のメアドを登録するってことじゃなかったの!!?


「はいっ、登録完了!ついでに私のも…」
「ケータイ返してよ」
「士道くん。ありがとね!」
「ツバメまでも、私を無視するんだ…」


私、メンタル攻撃には弱いのよ。

ぐすっ。
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