お題―恋する動詞
□3.諦める
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薫と並んで、星明かりに浮かぶ町並みを眺める。
あの別れの夜以来、初めての二人きり。
いつも通りに振る舞う薫も、少しだけぎこちない。薫の緊張が伝わって、剣心の方も我知らず浮き足立ってしまう。
あの時は、もう二度と会えないと思ったからこそ、その体を抱き締めることを自分に許した。
だが、一度自覚してしまえば、溢れた思いはなかなか押さえられない。
手を伸ばせば届く距離に、恋しい人。
せめて、屋根に置かれた彼女の手に触れたい。
だが、そんなささいな欲求も、そこここで聞き耳を立てているいくつもの気配のせいで実現しそうにもないが…。
思わず諦めのため息をつくと、薫が心配そうに覗き込んできた。
「剣心…これ」
どうか、無事で…――。
恵からの薬と共に、薫が向けてくれる優しく一途な想い。
(もう…出歯亀がいようと知ったことか…)
思わず、薫の無防備な肩を抱き寄せようとした、その時。
「うるァ、薫!!」
「痛ぁ!いきなり何すんのよ!」
「いーから、ちょっと来い!」
伸ばしかけた腕の先で、呆気なくさらわれていく想い人。
(…そりゃあ、出来るものなら、俺だって接吻の一つや二つ…はあぁぁ…)
引きつった笑みをはりつけながら、深い諦めのため息をついた。
おしまい!
※あの時、弥彦さえ出てこなければ、ちゅーの一つや二つ…!
アニメでは剣心の回想シーンで手を握って…た…よ!あれが剣心の願望だったらますます萌える〜!
このままではあんまりなので、おまけを次のページからどうぞ!