お題―恋する動詞

□4.懐かしむ
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※オリキャラとして薫ちゃんの親戚が登場します。
お母様の名前を佳代さんとしてます。




「――薫ねえちゃんは相変わらずだなあ」
「あら坊っちゃん。お嬢さんはすっかりお綺麗になられましたよ」
「そりゃ鬼も十八、番茶も出花って言うけどよ」
「…太一ちゃん、それ誉め言葉じゃないからね!誰が鬼よ!」

 剣心が外出先から帰ってくると、何やら居間が騒がしい。来客だろうかと顔を覗かせる。

「あ、剣心。お帰りなさい!」

 火鉢を囲んで薫と談笑していたのは、四十過ぎの大柄な女性と、まだ十代の線の細い若者。
「母方の親類の人よ。又従弟の太一さんと、手伝いのおりょうさん。小さい頃、お世話になっていたの」

 幼い頃、薫の母、佳代が病に倒れてからは、たびたび母方の親戚に預けられていたという。

「そうでござるか…拙者は緋村…――」
 こちらに世話になっている流浪人だ…とは続けることは出来なかった。

「薫お嬢さん…!」
「ねえちゃんでかした…!」
「おろ…」
 おりょう、太一の両人が、剣心の手を取らんばかりに詰め寄ったからである。

「「ようやっと婿様が来てくれた…!」」
「ちょ…ちょっと、太一ちゃん!おりょうさん!」
 真っ赤になった薫が、太一の襟首を掴んで剣心から引き離す。

「何言ってんのよ!剣心がびっくりしてるじゃない。…だいたい、私たちまだそんなんじゃ…」

 最後は彼の鳴くような声で尻窄みになっていく薫の様子に、二人はがくりと肩を落とした。この様子では薫の片恋か。だが、困ったような顔で笑う剣心の頬も微かに赤いので、脈がないこともないのか。
 太一とおりょうは視線を交わして頷き合う。


 おもむろにおりょうが取り出した風呂敷包み。
「何、それ?」
「大奥さまから託ったお見合い相手の釣り書きですよ」
「ええっ!いらないわよ!」
「すごい量でござるな」
 剣心がのんきな様子で釣り書きを手に取る。
(人の気も知らないで…!)

「お祖母さま、ほんとに心配してるんだよ。女の身で道場を継ぐなんて馬鹿げてる。器量はいいんだからさっさと婿なり嫁入り先なり探せってさ」
「薫が良き伴侶を得られないうちはお佳代に会わす顔がない、あの世へいけないって、そりゃあえらい剣幕で。この中から相手を選ばせないうちにはあたしたちも帰ってくるなと」
「もぉ〜、伯祖母さまったら…」
 薫はぐったりと肩を落とした。
「親心でござるよ、薫殿」「もう!他人事だと思って〜!」
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