□Book□
□向日葵は太陽に恋してるのです
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暑い。家の中でも家の外でも暑い夏。まだ朝だと言うのにジワジワと汗が滲んで気持ち悪い。だけど庭の花達の手入れを、水をやらなければならない。
朝から鳴き始める蝉が外に出た自分を迎えた。
「今日も暑くなりそうだなー。」
小さく呟きながら蛇口を捻る。ホースの先を潰し水を振り撒いた。花片や葉に当たった水がキラキラ光る。
「あつー…」
「あ、お早う。よく眠れた?」
「んーん、暑さによる最悪の目覚めだ。」
昨夜は激辛君が泊まっていた。まだ眠そうに目を擦りながら外に出て来た。
「そっか。朝ごはん作ってあるから先食べてて?」
「いい。お前終わるまで待つ。」
玄関の段差にストンと座る。“待つ”。その言葉ににんまりと口角を上げ「ありがと」と返した。
サラサラと振り掛かる水の音だけが少しの間その空間に響いた。
「ひまわり」
「え?」
「大事に育ててたやつ、咲いて良かったな。」
「うん。太陽の光いっぱい浴びたからね。」
ひまわり。春は色とりどりのチューリップが庭を埋めていたけど、夏は鮮やかな黄色の花が花壇に連なっている。
「植物に光合成は大事だよな。」
「うん。それにひまわりは太陽に向かって真っ直ぐ伸びるんだよ。」
「ふーん。まあ“向日葵”って書く程だもんな。」
花には余り興味を示さないけど、話を聞いてくれる激辛君。蛇口を止め、ホースをしまう。そして高く伸びたひまわり2本を鋏でパチンと切った。
「ひまわりの花言葉、知ってる?」
「知らねぇ。」
「『私の目は貴方だけを見つめる』。ひまわりは太陽に恋してるみたいだね。」
「見つめ過ぎてそのうち焼けそうだな。」
「あはは…。でも意外と本望だったりしてね。」
「そうか?」
「身を焦がす程好きなんだよ、きっと。僕みたいに。」
「はっ…!?///」
「僕も君だけを見つめてるからね。
……さ、そろそろごはん食べよっか。」
「あ…、おう。」
ひまわりが風にゆらゆら揺られ、家の中に入る僕らに手を振った。
fin.
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ひまわりの有りがちなネタでした。ひまわり大好きです!
トゲの自宅の庭は季節の植物で溢れております(^∀^)
ここまで読んで下さり誠にありがとうございました!!
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