□Book□
□それは少し甘い様な
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最後の一口にもなると舌全体が麻痺していて、もう甘味も辛味も何も感じない。
不味いとかじゃなくて、決して不味くはなくて、そもそもコイツが作った物に不味い物は一切存在しなくて。
ただ自分が、自分の味覚が可笑しいだけで。
「ご馳走さんでした。」
「ああ、お粗末さま。お皿下げるね。」
「あっ悪いな。」
コイツ、トゲは趣味でケーキとか菓子を作る。他の仲良い奴らに配ったりもしていて、今すぐ店を開けそうだと評判も良い。
隠してるけど実は甘党な俺にも勿論振る舞う訳だが、俺にはアイツらみたいな甘味を舌で感じる事が出来ない。
「やっぱり辛くなってた?」
「んー。俺自分キライだ。」
口に含んだ食べ物全てが辛味になるからだ。
一瞬だけ甘い、と感じればすぐに辛みに変わる。俺の最大のコンプレックスだ。
「でもさ。激辛君、最後まで食べてくれるじゃないか。嬉しいよ僕。」
「そりゃお前が作ったやつだからな。残しはしねぇ。」
「ありがとう。」
無理して食べていると分かっていても、コイツは笑って見せる。その笑みで罪悪感が生まれるのだが、同時に胸の奥がギュッと熱く締め付けられる。
「本当に全部辛くなるの?」
「ああ。火ィ吹く程な。吹かねぇけど。」
「そう、なんだ。」
「じゃあ、」
口内に含まれた物は全て辛味に変わる。
筈だ。
眼前にはドアップのトゲが居て、口から呼吸は出来なくて。
“こういう事”は、不意にされるのだが、ほんの少し触れる程度のもので。
“なか”に温かいモノがぬるりと侵入している。
「中は何も辛くないね。」
「――ッ、な…!?///」
「あれ?激辛君、顔真っ赤ー。」
「ったり前だ!!!イキナリ何しやがる!!///」
「いや、口に入った物全部辛くなるんなら口の中が既に辛い味なのかなって。ずっと気になっててさ。」
「あほか!!!!!////」
「で、君はどうだった?」
「――――! ……、」
問いに答えようと口を開いたが途中で止めた。
辛くはない。
答えたら“次”がもう無い気がする。
それはほんの少し、甘かった様な。
取り敢えず顔から火が出そうだ。
fin.
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最愛キャラ同士のカプで初のDキス(?)な話でしたとさ。
涙目でもの食べる激辛君可愛いと思います。トゲもそう思ってる筈。
ここまで読んで下さりありがとうございました!!
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