みじかいの

□不器用な雪うさぎ
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私は、紫原敦くんのことを好きになってしまいました。

ふと、彼の事が好きだと自覚した私は誰に報告している訳でもなく、改めて確認するようにその言葉を繰り返し胸の中で再生した。

とりあえず自覚はしてみたけれどあんまり驚いていないという現状がそこにあった。

「あぁ、やっぱり?ww」みたいな。軽く自虐的に納得してしまっていた。


好き、というのは自覚すると恐ろしいもので彼に話しかけられない、それ以前に近づけない。目なんて合わせられる訳もない。

人間の感情とは面倒くさいものだな、なんてまるで人外のように呟いて溜息を一つ。

...厨二病乙。

さて、さっさと日直の仕事を終わらせて帰ろうか、と三割程しか書かれていない日誌に向き直りシャープペンシルを構える。

「...ひっ!?、つめた!」

と、そこで首筋に冷たいものが当てられた。
...雪?

「んー、これあげるー。」

私の後ろにそびえt、じゃなかった、立っていたのは件の彼、紫原敦くんでした。

私に差し出された手にあったのは、彼の掌には少し小さく、少々不格好な雪うさぎ。

「可愛い、けど...どうしたの?、って...

手!真っ赤だし冷たくなってるよ!」

雪うさぎに触れようと伸ばした手は彼の手にも触れてその異常な冷たさを感じさせた。

「...やーっと名前ちんがこっち向いたぁー。」

「、え?」

彼の間延びした喋り方はいつも通りでとても安心する。けど、今日は少し寂しそうな顔をしていて、私がこんな顔にさせたのか、と少し罪悪感。

「だって、避けられてるし目も合わせてくんないしー...」

あまり、周囲に興味を持たない彼の事だから、私が少し離れたからと言って何か言ってくるとは全くと言って良い程思っていなかった。

「だから、俺に笑いかけてくれるようにねー。

名前ちんこういうの好きそうだなぁ、って思って。」

彼の手の上の雪うさぎは戻り始めた彼の体温によってゆっくりと溶けはじめる。

「俺ね、名前ちんのこと好きだから、
名前ちんのためなら、笑ってくれるなら、なんだってするよ。」


私にはどうやら、季節の間隔がないみたいです。

...もう、春になりましたか。


「それじゃあ、手始めに。私と付き合ってくれますか?」

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