ダンウォ
□彼の部屋=?
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土曜日の放課後、帰り道。
【明日、予定空いてる?もし良かったら、一緒にいたいなあ】
緊張しながら、彼にそう送る。送信完了を確認して一度仕舞ったCCMが着信を知らせる。彼からかな。期待しながら、内容を確認する。
【空いてる。明日部屋に来ればいい】
素っ気ない返事だったけれど、私がドキドキするには十分で、思わず口元が緩んでしまった。
【分かった。じゃあお昼頃に行くね!】
そう返事をして、CCMを仕舞った。
『何か買っていこ』
私はお菓子を買いに店へ向かった。
『こんなとこかな…』
お菓子を買って、寮に帰る。お菓子といっても飴とかチョコレートくらいなんだけど。
チョコレートは飴玉みたいに包んだのを大量に袋詰めした物だ。種類は無くても量はあるよ、うん…。
『明日楽しみだなあ』
夕食もお風呂も済んで、ベッドに寝そべる。今の私は凄く浮かれてるんだろうな。ヒカル君に会えるんだもん。
刹那、彼とのファーストキスを思い出す。あれは私が熱を出した時のこと。保健室で、ヒカル君が私に――。
『っああああ!!!』
恥ずかし過ぎて、声が出てしまった。大丈夫、ルームメイトは今いないし、そんなに大きな声は出てない…はず。
「ナマエ?なんか叫んでたみたいだけど大丈夫!?」
ユノちゃんが部屋のドアを開けて言う。え、嘘!??
『う、ううん!何でも無いよ!』
作り笑いをしてそう言うと、彼女は不思議そうな顔をしつつも部屋に帰っていった。
『はあ…』
これから何かを思い出す時は、口を塞ごう。そう決意した。
***
次の日、約束の時間。
私服に着替えて、彼の部屋に向かう。男子寮だけど…大丈夫だよね。
部屋の前に着き、ドアをノックする。どうぞ、という声を聞いて中に入ると机に向かう大好きな人が目に入った。
『あれ?アラタは?』
「サクヤと出かけた」
近付いて見ると、彼は勉強していた。真面目だな…。
『え…と、お菓子買ったんだ!…食べない?』
彼は私をチラ、と見ると溜め息をついて鉛筆を置いた。なんかごめんなさい。
「別に良いけど。それなら談話室の方が良いんじゃないか」
そう言って彼は椅子から立ち上がってドアへ向かう。…て、
『いい行かないで!!その、此処が良いな…』
彼の腕を掴んで必死に止める。ヒカル君は私をしばらく見つめてから、仕方ないな、と溢した。
「そこ」
彼はベッドを指差した。座れって事?ベッドに座ると彼は、
「汚したりしたらただじゃ置かないから」
そう言って私の左横に座った。
『はい』
チョコの袋を開けてヒカル君に差し出すと、彼は1つ取って口に入れた。私もそれにならってチョコを食べる。ほんのり甘くて美味しい。
「…飴?」
袋をがさがさ漁ると彼は、飴の袋を取り出した。
『う、うん!私が大好きなやつ』
「ふーん…食べる?」
『うん』
すると彼は飴の小包を開けると自分の口に入れ…え?
『ヒカル君が食べてどうすっ…んむ!?』
突然塞がれた唇。飴の甘ったるい匂いのせいで頭がおかしくなりそう。少し開いた唇をこじ開けられ、ヒカル君の舌が口内に入ってきて、同時に飴玉がころんと転がってくる。
そのまま絡まる舌。呼吸の仕方が分からなくて、息が出来ない。ヒカル君の胸板をトントンと叩くと、あっさり解放された。
『はぁ、はぁ…』
クラクラする視界でヒカル君を見ると、彼の顔が真っ赤に染まって見えた。
何だか愛しくなって彼を抱き締めようと手を伸ばすと、こちらをキッと睨まれ腕を捕まれた。するとそのままベッドに倒され彼が覆い被さる。
「ナマエのせいだ」
そう言って私に口付ける。手を伸ばして彼を抱き締めると、きつく抱き締め返された。
口の中で飴玉が小さく溶けていく。
ヒカル君も横に来て、二人向かい合う。彼は私の髪をさらさらと撫でる。
それがとても心地よくて、
『なんか、眠…い…』
意識がふわふわしてきた。寝たくない、寝たらヒカル君と過ごす折角の休日が。でも私の体は限界だった。
「おやすみナマエ」
『大好き…ヒカルく、ん……』
微笑むヒカル君を見て私は、ふわふわした意識を手離した。
「おーいヒカル…ん?」
部屋の扉を開けたアラタが最初に目にしたのは、仲良く眠っているヒカルとナマエ。
「邪魔しちゃ悪いよな」
アラタは微笑むと部屋を出ていった。
二人が目覚めるまで。