長編

□出撃 ライディングアーマー
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「エルダーシティ攻略作戦は、継続中との認識で良いのでしょうか」
「勿論よ」

翌朝。
第2小隊は職員室にいた。

「ならば、今日のミッションは第2小隊に一任して頂きたい」
「このミッションは、エルダーシティの制圧拠点を抑えることで完了します。エルドバンド…要塞戦車の攻略は、副次的なものと考えます」

彼らの作戦に、美都は冷静に返す。

「なるほど。でも要塞戦車は敵の拠点防衛の要よ。対処の手段無しに一任することは出来ないわ」
「ウォータイムまでには答えを出します」

その頃2年5組。

「鉄骨?」
「そう、鉄骨を落とすんだよ!」

第1小隊は作戦会議を行っていた。クラスメイトも興味があるのか無いのか、数人はその様子を見守っている。

「まあ何でも良いんだけどさ。とにかくでっかいのをアイツの上に落とすんだ!」
「でかい物を落とすって…。そりゃ戦車の弱点は上面だけど…」
「エルドバンドは巨体だが、動きも速い。そんなことが出来るとは思えない」

サクヤとヒカルが諦めていると解釈したのか、アラタは強く言った。

「あのさ!やる前から引いてちゃ、勝てるもんも勝てないぜ!」

その時、教室の扉が開き第2小隊が戻ってきた。
彼らを見ていた第1小隊だが、すぐ作戦会議を再開した。

『おはよう。どうしたの?第1小隊は』

同時に、登校してきたばかりのナナシが、状況を読めずナオトに尋ねた。

「ああ、おはよう。要塞戦車にリベンジするんだってよ」
『そうなんだ…』

第1小隊とは席が近いため、ナナシは邪魔しないようにと小さめの声で話す。

「こいつらが出来るかな〜」

リュウヤがわざとらしく呟くが、その声は作戦会議中の第1小隊には聞こえていなかった。

『出来るって!だってフォーメーションアタックも出来たんだよ』

リュウヤの声を聞いたナナシは言った。

「さあ、席に着いて。ホームルームを始めるわ」

扉が開く音と共に、美都が入ってくる。第1小隊を除く立っていた生徒たちは、急いで席に着いた。

「美都先生!今日のミッション、もう一度第1小隊にやらせて下さい!」
「おいアラタ」

ハルキの制止も構わずアラタは続ける。

「作戦があるんです。今度こそあの要塞戦車を」
「まだ何も決まってないんだぞ!」

美都は冷静に言い放った。

「本日のミッション遂行は既に第2小隊より申請が出ているわ」
「えっ、第2小隊が…?」

第2小隊に視線が集まる。

「でも第2小隊は、納得できる攻略プランを出せていない。現時点での第2小隊投入は保留。そこで、あなたたちに作戦を考えて貰います。的確なプランニングをした小隊にこのミッションを託し、そして成功した際にはその小隊がエルダーシティのラボを優先的に使用できるものとします」

美都の言葉に、メカニック達の表情が変わる。

「へぇ。奮ってご参加下さいってことか」

カイトが言う。

「競争か…サクヤ。今度こそラボはお前の物にしてやるからな!」
「うん…」

サクヤの返事は小さかった。




理科の授業。
この日は実験だった。

「(どこかに無かったかな〜でっかい物)」

アラタはまた、授業そっちのけで作戦を考えている。
小隊メンバーはまたかとばかりに顔を見合わせため息をついたが、彼はそれにすら気付かなかった。

「(重い物…でかい物…。アイツの動きを止めるにはかなりの大きさじゃないとな〜。でもやっぱりそんな物は…)」

ここで、アラタはビルにしようかと考えつき、想像してみるが、

「(出来るわけないって…)」

やはり現実的ではない。

「瀬名君」

見かねた先生が声をかける。

「本当に何か無いのかよ…」

彼には聞こえていない。

「瀬名君!」
「えっは、はい!」

驚いた拍子に過熱中にビーカーに肘が当たる。
加熱されたビーカーは触れると火傷してしまう。
それはそのまま床へ落下していき――

ガラスの割れる音が教室中に響いた。
全員の視線が集まる中、

「すいません!すぐに掃除しますから!」

アラタは慌てて先生に頭を下げた。
ふとビーカーの残骸を見て、

「あった…」
「?」

彼は閃いた。

「あったぞ!でかくて重い物が!」




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