最遊記〜桜ノ子〜

□あの日
2ページ/2ページ




今日は八戒が俺に勉強を教えに
来てくれた。
俺には難しくて良く分からないけど
八戒に会えるのはとても嬉しいからわかんなくてもいいや。なんて何時も思ってしまう。

そうだ、あの子の話をしよう。
三蔵はその話は何も聞こうとしてくれないけど、
八戒なら聞いてくれるかもしれないし。

「なぁ!八戒!」

「はい、どうしたんですか?悟空。」

「あのさ、聞いて欲しい話があるんだけど...」

「?
はい。いいですよ。
どんな話ですか?相談でしたら、のりますよ。」

「うん。女の子の歌がよく聴こえるんだ。」

「女の子...?」

聞き返す八戒に俺はこくんと頷く。

「うん。 凄く綺麗な声なんだ。でも、凄く哀しそうで。
俺、めちゃくちゃ好きなんだけどさっ!でも、苦手なんだ。」

「人語喋ろ。バカ猿。」

上手く説明出来ない俺に助け船をだしたのか、
それとも呆れたのか(多分、いや絶対こっちだ。)俺の代わりに書類に目を通していた手をとめ、三蔵が八戒に説明してくれた。

「先日、ある日を境に頻繁に聴こえてくる女が歌っていると思われる歌だ。
俺も最初こそ幻聴かと思っていたが、
余りに幻聴にしては鮮明に聴こえるんでな。
昼間には聴こえてくることはないが、夜中、早朝なら時々聴こえる。
確か、歌詞は...「あぁ...僕も聴きました。それ。」...そうか。」

「えっ!八戒も聴いたの?!」

「えぇ。とても綺麗な声ですよね。彼女。」

「会ったのか。」

「いえ、会ったというよりも見たんです。木の枝の上腰掛けて居るのを。
僕も、最初ばかりは夢でも見ているのかと思っていたのですが
悟浄も見たと言うので...」

八戒も見たっていうことに俺は驚いていた。
じゃあ、あの子は本当に存在していたんだ。なんて、驚きと同時に変な安心感を抱いていた。

「彼女、いえあの子。
捕まえちゃいましょうか♡」

「え゛っ?!」「はぁ?!」

「あの子が出てくるのには規則性があるんです。
雲がない月が良く見える日、それか雲が無くなった後。その時を狙ってしまえば後は待ち伏せして
消えてしまう前に捕まえれば...」

「お前、正気か?」

「はい。三蔵だって捕まえたいのでしょう?
明らかに煙草の量、増えてるじゃありませんか。」

「チッ」

俺は嬉しかった。
あの子と話せるんじゃないかって。
これで友達になれるんだって、そう思えたから。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ