最遊記〜桜ノ子〜

□捕まえよう
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〜八戒視点〜

ーー僕があの少女を見たのはそう、確か1ヵ月前の月が良く見えていたときーー

今日もあの人の帰りは遅い。
あの人というのは勿論悟浄のことだ。
僕は住まわせて貰っている身なので、余りあの人に口出しは出来ないが...
元々、生活習慣が違うというのもあるし。

だから、すれ違いがある。

あの人は余り僕と話そうとしないし、僕の作った夕飯も食べた事がないに等しい。

もうそろそろ、自分で家...とまではいかないが、部屋でも借りて
生活しなければ。



そう、思っていた時だった。



歌が聴こえてきたのだ。
とても綺麗で儚くて触れたら壊れて消えてしまいそうな。

そんな...歌が。


いつの間にか僕は外に出ていた。
急いで歌っている人物を探してみたが、
案外近くに居たのだ、その子は。

その子の髪が月の光に反射して眩しい。僕は目を細めながらその子...少女に声をかけた。

「あの...っ!」

少女の肩がぴくり震えた。

少女はゆっくりとした動作で
振りむいた。

目が合い、少女の小さな口が何か呟いた。僕が瞬きをした時には
その少女は消えていた。

その時は幻覚だと思った。

この頃疲れていたのかもしれない、と自己解決して家に入ろうとドアを開けた矢先

「おい、八戒っ!い、今の見たか...?」

いつの間にか帰って来ていた悟浄が息を切らして(多分、走って来たのだろう。)僕に聞いてきた。

「え、えぇ。もしかして悟浄も...?」

「あぁ、こっちから歌声聴こえてきたからよ、急いで来てみたら...お前も見てたのか...
幻覚か何かかとおもったけどよ、違うみてぇだな。」

「はい、僕も幻覚と...彼女、誰なんでしょうか。」

「...さぁな。」


ーーその日はとても不思議な日だったーー
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