おはなし

□もし君がいなかったら(仮)
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三成で過去へタイムスリップ

(元親緑ルート後)


倒れた刑部を冷たく見下ろす三成。
刑部は薄れゆく意識のなか、三成のなを呼びながら手を延ばす。しかし、三成は『裏切者、貴様を友と信じた私が愚かだった』と手を叩き落とし、元親と家康と共に大阪城をあとにする。
元親の船乗った三成は、身体と心を休めろという船主の命で、船内の一室を借り壁に寄りかかる。
刑部の裏切り、そして知らぬ間に裏切りに染まっていたおのが手。家康を討つことも禁じられ、秀吉に許しを乞うことも叶わない、、、さまざまな思考が脳内をめぐりその場に倒れ込む三成。
意識がフェードアウトしていくなか、ふと刑部の顔が頭をよぎる。刑部の顔は"ヒヒッ"と笑いながら闇へ溶けるように消えていった。

そして、三成は気を失なった。



気が付けば、三成は大阪城の自室に居た。
元親に連れてこられたのかと気配を探るも、周囲に人の気はない。
軽く身なりを整え部屋を出ると、三成は周囲の異変に気付く。

季節が違った。

つい先日まで庭や周辺の山々を彩っていた紅葉はなく、まるで春先のような色とりどりの花と青々しい若葉が視界を埋め尽くす。
驚愕を隠せない三成、そこへ一人の小性が走りよる。
「三成様!もうお身体の方は大丈夫なのですか?」
「貴様は...」
かつて、己に使えていた数少ない小性だった。しかし、その小性は前の進軍の際己を庇って死んだはず。
忍びか?っと刀に手をかけるが、そこでもうひとつの違和感に気付く。刀の使い込みが以前と違うと。
毎日手入れをし、戦に出るたびに血を浴びせた刀は、手入れしても手入れしても消えない傷や汚れがついた。それが、まるで時を遡ったかのように減っていた。
ふっ、と一つの考えがよぎり。小性に今の日付を尋ねた。
そしてかえって来た返事は、秀吉が家康に殺されてから一週間後の日付だった。

最初は小性を疑い嘘を言うなと詰め寄った三成だが、やがて過去に逆行してしまったことを認め、これで元親を裏切ることなく家康を殺すことができると歓喜した。

早速、家康を討つ為にと豊臣の兵を集めたが、以前の半分も集まらない。"何故だ"と激怒する三成に、小性が少し言いづらそうに、"徳川へと寝返りました"と進言。
"刑部は何をしている!"と叫ぶ三成に、小性は首をかしげながら、

「大谷殿でしたら、病で隠居されましたよ。」


「三成様も、豊臣に力のない者はいらぬと散々にもうしていたではありませんか。」

と。


最初こそ驚愕する三成だが、あのような裏切者はいない方がいい、と結論付ける。

その後、進軍していく豊臣軍は戦に勝ちはするものの、死者や負傷者があとをたたず、豊臣軍を抜ける兵も増えた。以前ならそのような輩を見つけ出しては斬首していた三成だったが、今は政務で其どころではなかった。刑部がいないぶん、政務の殆どを三成がさばかなければならない。以前なら政務に強い豊臣の兵もいたが、すでに徳川に寝返っている。
三成は、以前のように家康への憎悪で眠れないのではなく、物理的に寝る暇がない日々をおくる。

そんな中、以前同盟を組んでいた、もしくは豊臣の配下に居た軍が、徳川についたという知らせを受ける。家康率いる東軍は、次々と元西軍を取り込んでいき、三成は卑怯者!私から何もかも奪うのか!と刀を握りしめるが、兵の数が圧倒的に足りない。そこで、急ぎ毛利に手紙をだし援軍を求めた。
しかし、いくらまっても毛利からの返事はない。三成は数人の護衛と共に毛利の元を訪れたが、"何故我が同盟も組んでいない貴様なんぞに援軍を出さねばならぬ。"と門前払いされる。
「では、同盟を組め!」
とわめき散らす三成に、毛利は"貴様と組んで毛利に何の利がある。徳川と石田、、、どちらが負けるか考えるまでもない"と。そして毛利軍の武力行使で石田軍は撤退を余儀なくされる。

「私はどこで間違えたのだ」

長曽我部軍が徳川と同盟を組んだとの報告を受け、三成は崩れ落ちる。
"長曽我部まで私を裏切ったのか?否、長曽我部は家康の友だった。ならば家康と同盟を組むのも当然だ。何故なら私と長曽我部は同盟を組んでいないのだから。以前の私はどうやって長曽我部と同盟を組んだ?あのときは刑部がすべてやっていた。私はなにもしていない。刑部が何もかもしていた。刑部はどこだ?何をしている。兵を集めるのも同盟を組むのも、すべて貴様がしていた。私はなにもしていない。何もできない。何だ?力が抜ける、、、あぁ、そういえば最近寝食を疎かにしていた。以前なら刑部が無理にでも寝食を私にとらせていたが、、、そうか、私は貴様が居なければナニ一つデきないノダナ"
三成はその場に倒れ悶々としたまま意識を失う。


三成が目をさましたのは見知らぬ部屋だった。あぁ、すべて夢だったのかと覚醒していない頭で考えながら起き上がると、元親がはいってきて「もう大丈夫か?」と尋ねる。元親によれば、大阪をでたあとすぐ三成は倒れ三日間目をさまさなかった。医者の見立てでは栄養失調と寝不足が原因だろう、と。
三成は元親に尋ねた。

「私は貴様のなんだ?」

「何って、俺たちゃ友達だろ?」

「...友、か。」

「?どうした」

「...刑部は、私にとっての友だった。」

「...」

「貴様にとっては憎い仇だろうが、私にとって唯一の友だった」

「石田...」

「友とはお互いに支え合うものだ。...刑部は
常に私を支えていた。」

「...っ、大谷はっ、あんたを裏切って!!」

「私はすべて刑部に任せていた。兵を集めるのも、同盟を組むのも、政務も...刑部は病の身でそれらをこなし、軍師としての責も果たし、私に寝食を促していた。」

「...」

「私は、刑部になにもしていない。憎いと、私はすべてを奪われたと、嘆いていただけだっ!」

「お、おいっ 石田」

「刑部は常に私の為にと言っていた!私はやつにすべてを任せていた!勝手にしろとも言った。」

「…」

「刑部がいなければ、私は貴様など知りもしなかった。貴様も、四国壊滅がなければ家康と同盟を組み私の首を狙っていただろう」

「刑部がいなければ私は何もできない私は何もできない秀吉様の敵を討つこともできない刑部もいない私には何もない自ら命をたつこともできないあぁぁあああぁああああ家康ぅぅうう何故私を殺さなかった秀吉様と共に死んでいれば刑部に負担をかけることもなかった刑部何故私を捨て置かなかった私はこんなにもおろかな将だったのに長曽我部何故私を殺さないこんな無能でおろかな私など生きている価値などない殺せ殺セこロセェぇエええ!!」

「お、おい石田!!落ち着け!!」

発狂する三成、押さえつける元親。

ふわっ

そこへ一匹の蝶が何処からともなく部屋に入ってきて、発狂する三成の頭に止まる。
その瞬間、三成は目をカッと開く。

”これも義のため、三成(ぬし)の為…”

元親の耳には確かにそう聞こえた。
ふっと三成の体がその場に倒れ、蝶はふわりと飛び上がる。
とりあえず三成を寝かせた元親は、その蝶を捕まえようとするが、手を伸ばした瞬間蝶は燃え落ちるようにぼろぼろと崩れ落ちた。

"三成が目覚めた"と部下の報告を受けた元親が三成の部屋に行くと、三成は上半身を起こし他状態で元親のほうを向いた。そして、


「貴様は誰だ?」


















っ的なバッドエンドがみたいです。
あの蝶はもちろん刑部なんですが、自分と凶王三成の記憶を連れていっちゃった感じです。この後元親は激怒するんでしょうけど、刑部は知ったこっちゃない。凶王三成は我のものよ。
んで、自分と凶王の記憶をなくした三成は今後元親の元で意味のわからない消失を抱えながらそれなりに幸せに生きていくんじゃないですかね?
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