○ハンター試験編○
□美女
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ここは一体…………?
シオンは暗闇の中にいた。
遠くの方から声が聞こえるのだが、何を言っているかまではわからない。
私は…………。
何をしてたんだっけ…………?
頭が覚醒していないかのように、ふわふわとした感覚に襲われていた。
たしか…………コエンマがライゼンが人間界にいる≠チていう情報を掴んだから、ハンター試験を受けてライゼンを探そうとしてたんだっけ。
試験では飛影がいて、新しく友達になったアイスやキルア、ゴンにレオリオ、クラピカ…………。
クラピカ…………?
…………試験が進むに連れて見え隠れするこの衝動。
彼を想うと息がしづらくなるこの身体。
最近の私はどこか変だ。
戦友と共に戦いに溺れていたあの頃とは少し違っている。
そんな自分に戸惑っているのがよく分かるから…………。
そうだよっ!!
私はこんな暗い所に突っ立てるわけにはいかないんだ!
試験の合格よりも彼らと少しでも一緒に過ごしていたい。
そう、思えたから。
頬に落ちてきた温かいしずくによって、意識を取り戻したシオン。
見上げるとそこにはクラピカが大粒の涙を浮かべていた。
シオン「ク……ラピカ…………?」
クラピカ「シオン……?」
シオンの声に反応した彼は目を大きく見開いている。
シオン「なに……そんなに驚いてる…………の?」
クラピカ「……っ何を言っている!!
凄まじい音がしたから振り向いてみれば、ずぶ濡れになったシオンが横たわっていて…………!!
どれほど心配したと思っている!!!」
そう言うとさらにクラピカは涙をこぼす。
シオン「わっ、分かったから泣かないでよ〜」
そんな彼を見て慰めようと声を掛けるが、その行為がさらに涙を流させている要因であることに気付いていないシオン。
シオンは地面に片手をつき、上半身を少し上げ、空いている手をクラピカの目元にもっていき彼の涙をぬぐった。
シオン「よ、よく分からないけど、私は大丈夫だからさ?」
そう言って困ったように首を少し傾げるシオン。
そんな彼女の様子を見ていると、涙を流すことよりも再び帰ってきてくれたという安心感の方が勝って、それ以上涙が出てこなかった。
クラピカ「全く…………お前という奴は」
呆れながらも小さく微笑んでそう言っているクラピカを見て、
シオン「よかった。やっといつものクラピカに戻った」
なんて言っている。
さっきみたいな彼も見られるのなら少しの無茶もありかもな。
いつの間にか、二人だけの空気になっていた所でレオリオが声を発した。
レオリオ「シオン!! 大丈夫かよ、お前! 息してなかったんだぜ!!」
ゴン 「でも無事でよかったよ!」
キルア「オレも!」
飛影 「お前は悪運が強いからな。特に心配はしていない」
シオン「ま、だろうね」
みんながそれぞれのリアクションをしている中、
キルア「そんなこと言いながら、シオンがぐったりしてるとこ見て焦ってたじゃん」
飛影 「ふん。そんなわけないだろ」
なんて言いながらもそっぽ向いてしまう所を見るとホントのことなんだろう。
珍しいものが見れたな。
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