○ハンター試験編○
□ジャンケン
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ビタンッ!!!
そんな中、通路とデッキを繋ぐ扉が勢いよく開いた。
驚きのあまり肩をビクつかせるクラピカ。
そこには、たった今までクラピカの頭を悩ませていた張本人がいた。
クラピカ「……シオン! もう大丈夫なのか!?」
シオン「うん、さっき治療が終わったんだ。あの怪我よりも痛いのかと思ってたけど、麻酔で全然痛くなかったよ」
なんて言いながらシオンは自分に呆れていた。
そりゃそうだよな。
麻酔なしで、お腹の傷を塞ぐなんてことはしないか…………。
クラピカ「さすがに麻酔なしで、腹の傷を塞ぐなんてことはしないだろ」
シオン「あっ! 私も今、同じこと考えてた」
そう言うとシオンはニコニコと笑っていた。
そんなシオンを見て、クラピカは口元に手をそえてクスクスと笑っている。
シオン「…………いっ!!」
クラピカ「!! シオン!?」
シオンがいきなり前のめりに倒れてしまった。
そこをクラピカが抱き止める。
お互いの距離が0≠ノなってしまった。
2人に沈黙が訪れる。
クラピカ「……! シオン大丈夫か?」
シオン「あっ! うん、大丈夫だよ。受け止めてくれてありがとう。
急いで来たから体に負担がかかったのかも…………。だってレオリオが…………」
クラピカ「レオリオがどうした?」
このタイミングでレオリオの名前が出てきたことを不思議に思い聞き返した。
シオン「レオリオがクラピカの所に行ってやってくれ。
腹を刺されたお前を見て顔真っ青だったからよ!≠チて言うから早く知らせてあげた方が良いと思って」
レオリオの奴。
気を使ったつもりか?!
怪我人のシオンに行かせるなんて…………。
クラピカ「無理はよした方が良い。3次試験も控えているのだからな」
シオン「うん、そうだね。レオリオ達も今頃、荷物が置いてある部屋に戻ってるはずだから、私たちも戻ろうか」
そう言うとシオンは、クラピカから離れてデッキを出ようとした。
グイッ!!
するといきなり手首を捕まれ、後ろから抱き締められた。
シオン「ク、クラピカ?! あの、えっと…………」
クラピカ「すまない。…………少しだけこうさせてくれ」
そう言うとシオンの肩に頭を乗せてしばらく抱き締めていた。
シオンは気付いた。
クラピカの体が震えていることに。
レオリオの言っていたことは満更でもないらしい。
シオン「心配かけてごめんね。クラピカ」
互いが互いの体温を感じていた。
クラピカに抱き締められてから2分と経っていない。
しかし、この二人にはとても長く感じられただろう。
クラピカ「すまない長い時間…………」
シオン「あっ、全然気にしてないよっ! さ、さぁ! レオリオ達の所に戻ろう!!」
全然……か…………。
私のことを男として見ていないのか?
ここまできて、ようやく分かってしまったのに。
私はいつの間にかこんなにも溺れていたなんて…………。
シオンが通路への扉まで向かう足取りを見ているクラピカ。
シオンはロボットのようにガチガチで帰っていった。
……男として見ていないわけでもなさそうだ。
確信はないがそう思うと頬が緩んでしまう。
いつの日か復讐も何もかも終えた時は、この気持ちを伝えたいのもだ。
クラピカ「私を置いてくな! シオン!」
そう思いながらクラピカはシオンの後を追った。
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