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逃げようとしてる?
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『なんでかなー。もっと綺麗に出来ると思ったのに…』

「はは…きっと生地が柔らかすぎちゃったのね」



がっかりと肩を落とす私の横でマカちゃんが優しくそういってくれた。笑いが引きつってたなんて知らない知らない。



今日は授業で調理実習があった。マカちゃんと同じ班でマフィンを焼いたのだ。うまく出来たらキッドに渡すつもりだったのに…どーしようコレ。



「おい!」

『あ、キッド!』



マフィンを袋に詰め終わり教室へ帰ると真っ先にキッドに声をかけられた。



「今日は調理実習があったそうじゃないか。何を作ったんだ?」

『えーと…マフィン、かな』

「?」



疑問っぽく曖昧に返した返事に彼は首を傾げていた。ああ、可愛い。



『え…とね、美味しそうに出来たからこれはキッドにあげるには勿体ないかなーって』


…と、意地悪く言ってみたもののまじでこんなのあげられない。私だって自信持ってキッドに渡したいよ。しかし彼はケロっとした顔で手を出してきた。



「お前の作ったものなら美味しいに決まってる。だからほら、俺にくれ」



サラッと言われた言葉に顔が熱くなる。そして キッドは私の手のなかにある小さな袋を取った。



『あ、』

「コレ。あけてもいいか?」

『…う、うん』



内心ドキドキしながらキッドが袋を空ける手に釘付けになる。カサッと小さな音を立てて袋の口が開いた。そしてそれを開けた本人も固まってしまった。キッドは袋の中にあるものを手のひらに出してみる。



「えーと…これは、」

『…マフィンだよ?』





















10.


(なんで黒くてプヨプヨのマフィンが出来上がるんだ…)
(…マフィンだよ?)


現実逃避万歳。
ヒロインちゃんは料理が下手くそ\(^O^)/←




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