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博士の愛した女の子
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日の射し込まない薄暗い研究所で自分のデスクにつく研究者とその場に似つかわしい栗毛の愛らしい少女がソファーに腰掛け、各々のやりたいことをやっていた。

男の方はひたすら開いたノートにペンを走らせ、少女は分厚い本を読む。恐らく教科書であろう。


『博士、お茶煎れようか?』


少女、基 リリィはこちらに背中を向け作業をしているシュタインに言った。


「いいですよ。そんな気を遣わなくったって」

『だって…』


彼はこちらを振り向いてヘラッと笑う。そして再び机に向かった。


『………』


リリィはシュタインの事が大好きだ。そして彼もまたリリィの事を想っている。つまり恋人同士なのだ。

体を重ねたことだって何度もある。そこに幸せだって感じていた。だけどリリィは物足りなさを感じていた。


『(また実験?)』


そう。彼は根っからの解剖好きのためこうやって研究所でデスクについていることが多い。


『(それは分かってるんだけどさ…)』


たまに自分が彼の"研究"よりも劣っている気がする。

自分はもっと博士と一緒にいたいし恋人らしくいちゃつきたい気持ちだってある。



『(……気付いてくれないかな)』



リリィは読んでいた本を閉じ、ソファーから声を掛けてみる。


『博士の膝の上、座ってもいい?』

「駄ー目、」

『何でー』


ぶうと頬を膨らますリリィ。


「お仕事中です」

『けちー』


やっぱり駄目か。と思いながらリリィはソファーにコロンと寝転がった。そしてそのまま彼の背中を見つめる。



『(あの背中も、あの髪も、螺子を巻くあの姿も、全部好き…)』


触れたい。抱き締めたい。愛されたい。 欲張りなのは分かってるけど考えてしまうものなんだ。


リリィはそう思いながら夢の中へと堕ちていった。


















「よし、出来た」


仕事を終わらせパタンとノートを閉じ、道具をしまう。


「リリィ、」


彼女の名を呼んではみるが返答はない。シュタインはソファーに転がる少女に近付いた。


「リリィ…」


すると小さな口から聞こえる小さな寝息。


『すぅ――…』

「あらら」


シュタインは白衣と眼鏡を外し、彼女の横に腰掛ける。


「すみません…ほったらかしでしたね」


そう言ってリリィに毛布を掛けてやると彼女の表情は穏やかになり、にこっと笑ったのだ。


『むふ…むふふ…』

「(むふ?)」



『はか、せ 大好きぃ』

「!」


驚きはしたがシュタインの顔は嬉しそうだった。彼はリリィの唇に優しくキスを落とすとまたヘラッと笑う。


「俺は、愛してる」



そして彼は再びデスクにつき、椅子に反対向きに座ると 寝息をたてる愛しい彼女の寝顔を見つめた。
















(何で膝に座らせてくれなかったの?)
(興奮して仕事に集中出来なくなるじゃないですか)
(興…//!?)
(それにヤりたくなるじゃ…)
(わー!わー!//)





‡End‡
 

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