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□僕メランコリー
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俺には彼女がいる。
『マカ〜♪』
「あ、リリィちゃん!」
「……」
なんと言うか…こう、フワっとしてて可愛いくて
「おう、リリィじゃねーか」
『あ、ソウル!やっほー』
「……」
髪型も洋服も本当に見事な左右対称で
「おっ!リリィじゃんか!俺様より目立つなんて許せねー!」
「おはようございます」
『ブラック☆スターに椿ちゃん♪』
「……」
文句のしどころが無いくらいの自慢の彼女だ。
「なぁ、何してんだ?アイツ」
『さぁ?』
教室の隅で蹲って座り込んでいるキッドの存在に気付いたソウルはリリィに尋ねたが彼女は相変わらずニコニコしながら頭に疑問符を浮かべた。
『ねえねえ 皆で帰りに私の家行こうよ!美味しいアップルパイ焼くから!』
「わぁ 賛成!リリィちゃんのアップルパイ美味しいのよね♪」
「わっはっは!食ってやってもいいぞ!」
やんややんやとリリィを中心に話はどんどん盛り上がる。
その会話をキッドは教室の隅でひっそりと聞いていた。リリィは皆の先頭を歩き始める。
『ホラ、キッドも 立ってー。行くよー』
リリィはキッドの前に立ち、手を差し出した。
キッドは顔を上げ、差し出された手を見たあとリリィの顔を見つめた。
「……」
『?』
「(…ある。リリィの欠点)」
人がよすぎて誰にでも優しい所が彼女の唯一の欠点。
いや、それはハタから見れば欠点でも何でもない…寧ろ長所。
でも…
『さっきからどうしたの?キッドー』
屈んで目を合わせてくる彼女を見て、自分の中に渦巻くモノに嫌悪感を感じた。
独り占めしたい。誰にも触れさせたくない。あの笑顔も、あの甘い声も俺だけのためにあればいい。
「(こんな俺は我儘なんだろうか…)」
キッドは堪らずリリィを抱き締めた。
『キ、キッド//!?』
「……」
『皆見てるよ//!』
「!」
あぁ。そうだった。見れば回りにいたマカやソウル達が赤面しながらこちらを見ている。
俺は渋々リリィから体を離した。
「すまない、」
"俺だけのモノになれ"
だって好きだったら誰だってそう思うモンじゃないのか?
‡End‡
→あとがき