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□ウチの黒猫
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「にゃー」

『よしよし。お腹がすいたのね』

「にゃーあ」

『やだもうっ。くすぐったいじゃない♪』

「………」




――今 俺の目の前には全くもって面白くない光景があった。自分の彼女の腕の中を堂々と陣取って丸くなる一つの毛玉。


…いや、訂正。正しくは黒猫だ。そいつを俺は鋭い目付きで睨んでやった。
















《黒猫》













『可愛いなぁ お前は』

「…オイ 愛美、」

『なにー?』


任務先で拾ったその猫を構いながら空返事を返してくる彼女。全くコイツは…人の部屋に何しに来てんだよ。


「メシ食いに行くぞ」

『えー。今お腹減ってないからあとで行くよ。先行ってて』


とまた猫とじゃれながら返された返事。どうやら遊ぶのに夢中になっているようだ。


「お前 昨日もそう言いながらずらして食ったじゃねェか。いつまで毛玉とじゃれてんだよ」

『ちょっと…ユウ!?』


黒猫に構う彼女にイライラして俺は思わず強引に腕を引っ張ってしまった。

すると寝心地が悪くなったのか 愛美の膝の上で丸くなっていた猫は起きて俺に怒るように一鳴き。


『あーあ。怒っちゃったじゃない』

「…チッ」


無意識にしてしまった舌打ちを後悔しつつ 自分の部屋を出ていこうとする。するとふいに愛美の声に呼び止められた。


『…も、もしかして…やきもち、やいてるの?』

「!?」


恐る恐る尋ねてくるその言葉に思いきり目を開き、俺は愛美を見た。…俺が?嫉妬?有り得ないだろ。


「…何言ってんだよ」

『だってユウ、この黒猫が来たときからずっと変なんだもん。ずっと冷たいんだもん…』


愛美は自信無さそうに語尾を濁らしながらうつ向き、黒猫の頭を優しく撫でた。


『普段ユウがなかなか構ってくれないから…わ、私も仕返ししてやろうと思って』

「…バーカ」

『?』


頭に"?"マークを浮かべる愛美の顎を掴むとチュ、と軽いリップ音の立つキスをする。


『ユ、ユウ//!?』

「素直に"好き"って言えよ。…俺をかき乱すな 馬鹿女」


すると神田は愛美を後ろから優しく抱き締めた。


『ユウって…あったかいね』

「猫には こんなことできねェからな」


すると愛美は『ユウが一番よ』とクスリと笑った。


「当たり前だ」


そしてどちらともなくキスをした。





(どうやら、)
(ウチの黒猫も大変な甘えんぼのようです)


‡End‡

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