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□Order 02
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『…セバスチャン、それ本当?』
腕を組みながら窓辺に立ち、後ろで深々と謝罪を述べるセバスチャンを横目でちらりと見たロザンヌ。
「申し訳ございません。連絡はついたのですがどうも無理なようで…」
窓の外はバケツをひっくり返したような土砂降りで教師である夫人を乗せてこの屋敷まで来るのは少々骨が折れるとかなんとか。
『で、どうすんの?』
あわよくばこれで午前のスケジュールが空白になるわけだ。ロザンヌは薄ら込み上げてくる喜びを隠しながらセバスチャンに問った。
するとこの悪魔、笑顔でこんなことをぬかしやがった。
「ええ、ご心配は無用です。僭越ながら私めがご指導させて頂きます」
『は!?』
今 彼は何と言った?指導する?とんでもない。
『む、無理よ!第一セバスチャンがダンスなんて出来るわけ?』
「ええ。ロザンヌ様よりかは」
『……、』
笑顔でさらりとそう返してきた彼になんだか腹が立った。それってまるで私が下手みたいじゃない?
『セバスチャンとレッスンするくらいならシエルを呼んでくるわ』
「ロザンヌ様は坊っちゃんがどれだけダンスが下手…いえ、苦手かご存知無いでしょう?」
『あ、今私の可愛い弟をサラッと馬鹿にしたわね』
とんでもない。と相変わらず笑顔を崩さず彼はロザンヌの前に深く跪いた。手の甲には唇独特の柔らかさが伝わる。
「本音を申しますと、ロザンヌ様が他の男と踊っているのを見るのが嫌なのです」
『他の男って…弟じゃない』
「それでも、です。私こうみえて独占欲は強い方なので」
ギラ。獲物を捕えるような鋭い瞳を向けられてロザンヌは視線が外せなかった。しかしここで屈する彼女ではない。
『"これでも"は余計ね。見た目通りだわ』
「さようでございますか」
セバスチャンはいつもの笑みに戻ると手を胸に当ててロザンヌに軽くお辞儀をする。
「さぁ、始めますよロザンヌ」
『今は執事じゃないの?』
「ええ。あくまで教師ですから呼び捨てもアリでしょう?」
『………』
憎らしい程整ったその顔でそんな笑みを向けられてロザンヌは、狡いと思いつつ口をつぐんだ。
その娘、勤勉
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