キリ番

□溜息の素
2ページ/5ページ

『何してんだよあいつ等?』
麻生がソファーに腰を下ろしながらリモコンに手を伸ばす。
『晩飯の相談だろう?』
『はっ?晩飯?今から相談なんて誰かの誕生日か?』
『記念日らしいよ・・・』
『何の?』
『さぁ?とにかく2人の記念日なんだから 初めてデートしたとか
 キスしたとか・・・寝たとかじゃないのぉ?』
瀬伊が平気な顔で言葉を並べるが 麻生の顔はだんだん赤くなる。
『ねぇ一哉 この間は何だっけ?』
『確か俺の記憶によると 初めてのデートじゃなかったか?』
興味がなさそうに一哉は新聞を開きながら呟く。
『じゃぁ今日は差し当たりキスかな?』
『どちらにしても馬鹿馬鹿しい!毎日が記念日のようだからな』

あの2人の世界には 御堂一哉だって中々踏み込めないでいる。

『依織くん・・足りないものがあるんだけど・・・』
『そう。じゃぁ一緒に買いに行こうか・・・』
『キャー本当?じゃ早く行こう行こう!!』

パタパタとむぎの慌てる足音がキッチンに響く・・。
『ほらほら・・そんなに慌てると///』
キャーっという短い悲鳴と共にボールの転がる音がする。
『ほら言ってる側から・・・』
倒れそうになるむぎの胸に依織の腕が 後ろからしっかりと回され
どうにか難は逃れたようだ。
『あ・・ありがと』
『どういたしまして・・・何?どうかした?』
『だってぇ・・』

頬を染めてむぎが依織の腕を見る。
『ああ・・ごめんごめん・・』
言葉では謝ってはいるが 依織の腕は動かされる気配はない。
『依織くん・・離して・・』
『だめだよ!』
『だって・・出掛けるんでしょ・・』
焦った顔でむぎが依織を振り返る。
『僕とこうしているより出掛けるほうがいいの?』
『そうじゃないけど・・・お夕食の支度があるでしょ』
『僕と夕飯とじゃむぎは夕飯が大事なんだ』

瀬伊は呆れた顔をすると一哉を見た。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ