キリ番

□誘惑は甘い調を呼ぶ
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『許婚』と言われて 嘘だと解っていても
九郎さんを意識し始めた・・・。
でも お互いの気持ちを知って恋人になって・・・
あたしは天にも昇る思い!とはこういう事なのか・・・と思った。

でも・・・
あんなに近くに感じた九郎さんが 遠くに感じる。
恋人になったらば 前よりずっと淋しくなった。

『皆 ここの所戦いが続いたから疲れているだろう・・・。
 明日は1日休息日とするからな!』
宿に入って九郎は皆に そう告げると自分の部屋に向かった・・・。

『御曹司も中々やるじゃないか・・・』
『おや・・ヒノエも気がつきましたか?』
ニッコリ微笑みあう叔父と甥。
望美は そんな2人を不思議な顔をして 見つめていた。

夕餉の準備も整い 皆明日は休みと言う事もあり酒が進んだ・・・。

『ご馳走様・・・』
『望美・・・もういいの?』

ここの所 食欲の無い望美に朔が心配そうに声を掛けた・・・。

『うん。大丈夫・・・。ここ温泉があるみたいだから
 ゆっくり入って疲れを癒すよ・・・』
そう言って朔ににっこり微笑んだ。

『神子・・・。身体ではなくて心が疲れている・・。そう感じるよ』
白龍が朔を見ながら 心配そうに呟いた。
『そう・・・。何か悩み事があるのね・・・。可愛そうに』
朔と白龍は 周りがワイワイ騒いでいる中で こっそりと話をした。

フー・・・。
深い溜息が望美から漏れた・・・。
空を見上げれば青白い月が煌々と輝いている。

『九郎・・・さん』
本当は本人に呼びかけたい言葉であった・・・。
月に向かって言っても何も答えてくれる筈はない。

ここの所・・・
ずっと肌を合わせていない・・それどころか抱きしめても貰っていない!
キスだって・・・話だって・・・ううん。
2人っきりになっていないんだもん・・・。そんな事ができる筈はない。
宿の部屋は いつも朔と一緒だし・・・
別に朔が嫌な訳ではない。

ただ・・・2人きりになって甘えたい・・・。
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