キリ番

□My Sweet Home
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《いってらっしゃいのキス》
唇に君の感触が まだ残っている。

その温もりが消えないうちに いつも玄関を開ける。

『おっかえりなさ〜〜い。依織く〜〜ん』
走ってくるむぎを受け止め抱き上げる。
『ここはもう御堂家ほど広くないから 何も
そんなに走らなくても大丈夫だよ』
『だって・・・1秒でも早く依織くんの顔が見たかったんだもの』

頬を染めて告げるむぎを見つめクスクス笑う。

『ただいま・・・むぎ』
朝と同じようにチュっと軽いキスをする。

こんな《如何にも》なんて事を 僕がするとは・・・。
はっきり言って思いもしなかった。
瀬伊が見たら きっと呆れるだろう。

『依織くん。お腹空いてる?ご飯にする?
 それとも先にお風呂・・・?』
下から覗き込むむぎの仕草が可愛くて 思わず胸に閉じ込める。

『依織くん?』
『僕は・・・』
依織のお腹の虫がグ〜〜っと鳴る。
むぎはクスクス笑うと ご飯だね・・と僕のお腹の虫と会話したように
答え スルリと腕から離れキッチンに向かう。

===僕は・・・お姫さまが食べたいんだけど・・・===

むぎの選択は肯定しか許さないと自負している極上の笑顔と
むぎを痺れさせる甘い掠れた声は発せられる事もなく無残に砕け散った。

自分の所為で本人に伝える前にお預けを食らわされる事に苦笑する。
寝室に入るとベットには浴衣が置かれていて
これを着るように!!と無言で訴えている。

リビングに足を踏み入れるとテーブルには
料理が所狭しと並べられている。

『今夜は 冷酒が合うおつまみなんだけど冷酒で良い?』
『そのようだね』
『やっぱり・・似合う!!依織くん艶っぽい』

むぎが嬉しそうに微笑む。
僕はむぎに近づき唇を奪う・・・。

お姫さまのリクエストだからね・・・。
唇を離しむぎの頭をくしゃっとする。
『あたし最高に幸せ・・・』
『・・・僕もだよ・・』

浴衣を着てキスをして頭を撫でるだけで幸せなら 何時でもしてあげる!!
僕はいつからこんな男になってしまったのだろう?

冷酒をむぎのグラスにも注ぐと 小さく乾杯をする。
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