キリ番

□傍にいろよ・・・
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玄関のチャイムを鳴らすが応答がない。
こんな時間に出掛けているのか?
仕方ないポケットからカードキーを取り出し鍵を開ける。

電気を点けたまま外出はないな・・・。
バスルームに向かうとシャワーを浴びる音がする。
風呂か・・1人呟くとリビングに行く。

『・・・・・・何だ これは・・・?』

部屋の中は誰が見ても泥棒が入ったとしか思えない状況である。

ソファーの上にはドレスの山・山・山・・・。
新品の靴もあちこちに散らばり とてもいつも整理整頓と
口を開けば煩いむぎの言葉とは逆の光景が広がっている・・・。

『俺の書斎より悲惨な事になってるな』

再びバスルームに向かい 今度はドアを思い切り開ける。
『おい・・』
『キャーッ!!』

泡まみれの身体が慌ててバスタブに飛び込む。
『何だよ・・今更・・』
いつまで経っても明るい所での裸を見られるのは慣れないらしい。
『か・・一哉君。ビックリするじゃない・・』
『その前に何かいう事があるんじゃないか?』
『え〜と・・お帰りなさい・・』

俺はバスタブに小さく纏る華奢な肩に手をかける。
風呂に入っている所為だけではない 
その赤い顔をそっと上を向かせ唇を重ねる。
『ただいま・・・』

柔らかい微笑みが俺を包む。
『そんな顔をして俺を煽るつもりか・・?』
『ちっ・・違・・・ぅ』

脇の下に両手を入れ立ち上がらせながら キスをする。
胸に置かれた手がトントン叩かれ 俺は唇を離す。

『もうっ・・濡れちゃうでしょ!!』
仕方ない・・・。一旦手を離すとバスルームから出る。

ダイニングで新聞を読んでいると むぎが風呂から上がり顔を出す。

『ご飯・それとも・・お風呂・・』
『飯・・。それよりソファーを占領されているんだが・・』
『あっ!ごめんなさい。何を着て行くか決まらなくて・・・』

金曜の夜に皇君の襲名披露パーティがある。
揃って招待されている訳だが その時に来ていく服を選んでいたらしい。

『種類が有りすぎて中々決まらないんだよ』
『お袋に頼んで作って貰えばいいじゃないか?』
『今 何着袖を通してない服があると思うの!!』

料理を運びながら これだから一哉君には相談できないと
呟いている。
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