キリ番

□叱られたい
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『ねぇ 一哉君』
『何だ。朝食が出来たのか?』
『出来たんだけど・・ちょっと聞きたい事があるの?』
『何だ?手短になら聞いてやるが』

何でいつもこの人は こんな偉そうなのか?
そんな事を思いながら むぎは一番適任と判断した一哉に話し始める。

『例えば一哉君に4つ下の恋人がいたとするでしょう。
いつも子供だからって思って 何でも大目にみてるけど
その子の事を本気で叱るっていうか怒る時って 
その子が何をした時?どんな事をすれば本気で叱る?』

一哉は話を一応最後まで聞き 深い溜息を吐く。

『俺の場合はテストの点数が平均以下の時。
 仕事をサボった時。それから尻拭いをさせられた時。
 5分以内にコーヒーを持ってこなかった時。他にも沢山あるが
 俺は松川さんじゃないから彼の事は解らんな』

『はっ?』

スッカリバレテイタ・・・・。

『すず・・・おはよう。どうしたんだい こんな所で?』
『依織くん。おはよう。何でもないよ』

慌ててリビングからダイニングに移動する。

『ねぇ 一哉君』
『何だ。さっきから・・』
『さっきの事は秘密だよ。あと ちゃんと真面目に考えてよ』
『秘密はいいが 俺は真面目に考えた事しか言っていない』

麻生の顔を見つつ
《この人は 直ぐ怒るから問題外》
瀬伊の顔を見つめつつ
《妖精は揶揄かうから相談できない・・・》
もう一度一哉を見つめ
《やっぱり・・この中だと一哉君しかいない》
3人を代わる代わる見つめながら 同じことを心の声が繰り返す。

ハァーっと深い溜息が出る。

依織はダイニングでの一哉とむぎの遣り取りが気になっていた。
しかし そんな事で目くじらをたてても大人気ない!
そう自分に言い聞かせるが 面白くない事は事実だ。

カチャカチャと食器の音が鳴り 洗物が始まる。

不意に後ろから抱きしめられ 慌てて振り向く。
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