キリ番

□未来U
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『一哉くんなんて 大っきらい!!』

お母さんがバタバタと部屋に駆け込むのがわかった。

何なんだ・・・・?

僕は そっとリビングに足を運んだ。
いつもと変わらず ソファーで足を組んで
お父さんは英字新聞を広げていた。

妹の泉は ぬいぐるみを抱きしめ本を見ている。
ふと顔を上げ お父さんの腕を掴むとお父さんも泉を見る。

『ワンワン 可愛いね』
『どれどれ?あぁ〜可愛いな。これはウエストハイランドホワイトテリアだな』

泉は不思議そうな顔をする。
『ウエスティ。っていうんだよ』
頭を撫でながら お父さんが再度答える。
『うえすてい?』
『そうだよ。ウエスティだよ』

僕に気がつくと いつものように笑顔を向ける。
『智久 泉の面倒をちょっと見ててくれないか?』
『うん。いいよ』

そういうと2階に ゆっくりと上がっていった。
本当は駆け出していきたいのだろうが そこがお父さんの偉い所かな?

僕はお父さんみたいにカッコ良くなりたい。
優しくなりたい。強くなりたい。偉くなりたい。
そして お母さんをお嫁さんに貰って・・・・。

妹も可愛い。護ってあげたい。
でも お父さんやお母さんを取られた気がして
ちょっと意地悪したくなる時もあるけど。

『お兄ちゃん。これ読んで・・・』
『写真集か?いいよ 一緒に見ようね』
『うえすてい可愛いね。欲しいね』
『そうだね。お父さんに言ってみようか?』

2階を気にしつつも 写真集の頁を捲る。

ウトウトとしだした妹にそっと問いかける。 
『もう 寝ようね』
『お兄ちゃんも一緒?』
『うん。一緒だよ』

妹の手を引いて2階に上がる。

『お兄ちゃん ワンワン欲しいね』
『うん。きっとお父さんが買ってくれるよ』
微笑みながら妹を寝かせる。



『却下・・・』
『どうしてよ・・』
『どうしてもだ!』

お父さんとお母さんの声が聞こえる。
そっと開いてるドアから覗いて見る。

『すず・・・』
『もう・・・誤魔化されないから・・・』

キスしようとするお父さんに お母さんが言う。
お父さんは深い溜息を吐く。

『嫌なんだよ・・・』
『・・・?何が・・・?』
『子供たちに お前を既に取られてるんだ』
『はっ・・?』

お父さんは お母さんを抱きしめる。
『もう これ以上誰にも渡せない!!』
『・・・ばか』

そう言うと お母さんからお父さんにキスした。
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