キリ番

□願い
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ここの所 朝家を出たらば一旦着替えに戻り
帰ってくるのは午前さま!という日々が続いている・・・。

今日は早めに戻ることが出来たが それでも時計の針は
10:00を回っている。
鉛を背負っている感覚の身体は 疲れきっている以外の何ものでもない。

『おかえりなさーーい』
闇の中にポっとそこだけ明るく輝く光があるような
可憐な笑顔が一哉に近づく・・・。
『ただいま・・・』
伸ばした大きな掌でむぎの頭をくしゃりとすると
玄関マットに足を乗せた。

一瞬むぎは小首を傾げたが 何かを閃いた顔になる。

『一哉君疲れたでしょ!お風呂の準備できてるよ。
 ゆっくり入ってね』
『ああ・・そうする』
『お腹は・・?』
『空いてない!』
『じゃあ・・・。後でコーヒーは?』
『ああ・・そうだな・・』

2階の階段を上りながらの短い会話である。
スーツを脱いで手渡す・・・。
その行為さえ久々のように思える。
最近は帰ってくると 一哉のベットにむぎが潜り込んで眠っている・・・
このパターンが定着している。

『お風呂から出たら・・また仕事?』
『ああ・・。今日中にチェックする資料と
フランスからのメールが来ている筈だからそのチェック・・それから・・』
『解った!じゃあ適当な時間を見計らってコーヒー持ってくるね!!』
『ああ頼む・・・』

パタンと一哉の部屋のドアが閉められた。
『何を怒っているんだ・・?』
ポカンとした顔で一哉は1人呟いた。

リビングではニッコリとした微笑を浮かべ 依織がむぎを待っていた。
『終わったのかい?』
『うん。後は適当にコーヒーを持って行けばいいの』
『そう・・・』
『ネッ!続き続き・・・』
嬉しそうにむぎは依織の隣に腰を下ろした。
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