キリ番

□全くと溜息
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Pm11:00・・・

家の前でバッタリと一哉と依織が出くわす。

『おや 一哉。今帰りかい?』
『ええ・・・松川さんも?』
『まぁね』

短い会話の後 一緒に玄関に入るとギョっとする。
玄関マットの上に腰を下ろし むぎが転寝をしている。

『全く・・・何をやっているんだ!!』
『掃除の途中ででも疲れて寝てしまったんじゃないかい?』
依織がむぎの頭をくしゃっと撫でると むぎが薄らと瞳を開く。
頭を撫でている依織ではなく 依織の隣で仏頂面をして腕組みをしている
一哉に両手を伸ばした。

『一哉・・く・・・ん』

一哉は深い溜息を吐くと伸ばされた腕ではなく
脇の下に手を入れ軽々と抱き上げる。
『こんな所で何をしている』
『だって・・・家の中・・あたし1人だし・・・
 ミステリーの特番見てたら急に怖くなって・・・』
『はっ?』
依織はクスクス笑うと 一哉の肩をポンと叩いた。
『で 玄関で誰か帰ってこないかなぁって待ってる内に
 寝ちゃったみたい・・・』

『世の中幽霊より怖いのは 生きてる人間だ』
一哉はピシャリと告げると そのままむぎを床に下ろした。

『やぁー!!』
泣きそうな顔で むぎが一哉に手を伸ばした。
『腹が減った・・・夜食。その後風呂に入って残った仕事を片付けてからだ!』
『・・・・・・』
『・・?むぎ?』
『一哉君なんて・・・・もう知らない!!!』

ポロっと涙を零すと依織に抱きついた。

『おやおや・・・余程心細かったようだね・・』
依織はむぎの頭を撫でながら 深い溜息を吐く。

一哉は怖い顔をしていたが 此方も深い溜息を吐くと
黙って2階への階段へ向った。

『一哉?いいのかい?』
『・・・・』

依織の腕の中・・
黙って階段を上っていく背中を見つめ むぎの涙は頬を容赦なく伝う。
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