Treasure N

□玲那様より2
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選択肢が多いのは自由なのか。
それなら俺が奪ってやる。


自由よりも、俺を選べ。



yes or yes



夕陽が世界を朱色に塗り上げる放課後の屋上。
遥か下方で部活動に勤しむ掛け声や帰路に着く生徒達の雑談。
屋上には俺と幼馴染みの二人だけ。


雰囲気は最高。


フェンスから身を乗り出して校庭を見下ろすスザクの隣に並んだ。

「危ないよ。」

同じようなポーズを取ろうとするとスザクから注意の声が飛んだ。
俺は子供か。
文句は口の中で飲み込んで、今度はフェンスを背にし凭れ掛かる。

特に気にした様子のないスザクは相変わらず校庭を眺めていた。

「あ、シャーリーだ。今日はミーティングだけだって言ってたしもう終わったのかな。」

少し顔を伏せて横目で視線を送ると気付いたのか照れ臭そうにこちらを向く。

エメラルドのような瞳の中にオレンジが一筋浮かぶ、真ん丸の大きな目。スザクの目。
その中には俺の姿も映り込む。


とても自然に、素直に、キスしたいと思った。


「どうしたの。」

間抜けにへにゃりと笑う唇に指を添える。
驚いたスザクが息を詰めた。
ゆっくりとラインに沿って、端までなぞる。
驚いて固まるスザクの様子が楽しくてたまらない。

それからずっと自分の指の動きを追っていた目を再び緑に向けた。
瞠られ揺れるエメラルド。

「なあ。」

手を自分の元に戻し、掠れる声で呼び掛ける。

「キス、したくないか?」

ごくりと目前で喉が鳴る。



さあ、今、お前の選択肢は二つ。
yes、もしくは…
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