娘っ子を始めてみたのは、喋ると白い息がでる、あの季節だった。
月が雲に隠れた。
夜中、いつものように橋の上でボーとしていたら、不意に橋の下から河川敷を歩く音が聞こえてきた。
‥こんな夜中に誰だ。
幕府の犬かァ?
俺は刀に手をかけながら、橋の下に降りていった。
‥‥誰も居ない‥?
とたん、後ろからじゃり―‥という音が聞こえた。
反射的に俺は音に向かって剣を抜いた。
「ひっ‥‥」
「誰だァ、てめェ‥幕府の犬かァ?」
「ばくふ‥いぬ?あたしは犬ぢゃない‥」
怯えた声でそう云った、小さな、小さな影。
雲が月から離れた。
その時、俺の期待を裏切った
小さな、影
(たかすぎ‥しんすけ?)
(なんでこんな‥‥)
月明かりに照らされて姿を表したのは
ボロい服を着て
傷だらけの
幼女だった