novel
□AM
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かなり戻ってpm 8:30
私は秋道チョウジに会った。
彼は言う。
「シカマルは今花火をかき集めてるよ。」
さらに、
「たくさんあった方が、長く一緒にいられるって。」
「・・・・・へぇ。」
驚いた。あのいつだって言葉の足りない男がそんなことを言っているイメージが湧かなかった。
「だから遅刻しても怒らないで待っててあげてね。」
あくまでも、そのチョージの優しさに微笑んで、私は待ち合わせの場所に向かった。
そして今はam 0:00
「お、おめでとう。」
私は淡泊に「ありがと。」と言ったつもりだった。
「何、ニヤニヤしてんすか。」
「別に、何も。」
シカマルが「気持ち悪りぃ」と付け足したから、軽く睨んでやった。
あんたの想いを知ってる。
私には、それだけで充分すぎるよ。
だけど、私たちの間にはあの花火のように切っても切れない隔たりがあるから、迂闊に口にできないことは分かってる。
その想いに未来がないかもしれないことも、分かってる。
それでも、花火はいつか消えるはずだということを、私は忘れてはいない。
それはきっと、彼も。
「何だよ、つまんなそーな顔して。」
シカマルの言葉に、私は自嘲気味に笑って応えた。
察してもらおうなんて、思っていたわけじゃないけれど。
急に、手に、温かいものが触れたかと思うと、私の視界はシカマルでいっぱいになった。
反射的に目を閉じると、周りを囲む虫の鳴き声さえ、私には怖かった。
まるで四面楚歌じゃないか。
惜しむように、ゆっくりと離れてゆく唇が、そっと告げる。
「今は、月しか見てねーだろ。」
そう言って空を見上げてしまった彼の視線を追って、同じ場所を見る。
そうだ。
私は今、とてもうれしいんだと思う。
それでもやっぱり、うれしいことを失う怖さばかりを、無意識に追いかけてしまっている。
そんな私を見て、月が優しく笑った、
気がした。
end