novel
□sympathy
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緊張がはしったのはほんの数秒だけで、私をじっと見ていたテマリさんが急にふわりと笑った。
「便利なんだな、その眼。」
「でも」
言いかけた言葉を止める、私の癖。
テマリさんは何も言わないでいてくれるから、話してもいいような気になる。
「見たくないものが見えるときも、あるんです。」
(そうか、私、)
言いながら、気づいたことがある。
(このひとのこと、好きになってたんだ)
だから知りたくなかった。
たった数日、任務を共にしただけでも、たくさん分かったことがあって、
そして私と、とてもよく似た今の状況。
どちらが絶望的か、なんて張り合う気はまったくないけれど。
ふと見ると、私の大好きなひとは、ネガティブなナルト君に絡まれて眉間に皺を寄せている。
そして視線を戻すと、テマリさんもまた、『そのひと』を見ていた。
静かに、そっと、
誰にも知られないように想い合っている、2組の糸。
「テマリさん・・」
「ヒナタが言いたいこと、分かるよ。」
このひともまた、私について、いろいろ気づいている。
「怖く、ないですか?知られてしまうこと」
「相手にもよるだろう?」
ヒナタ、あんたなら。
そう言われて、私はとてもうれしくなった。
『誰にも言えないつらさは、よく分かるよ。』
2人で、そう、静かに合図をしているよう。
「私、見えてよかった。」
それから先、私たちは他愛のない話しか、していない。
end