novel
□スピカ
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そのひとにしては珍しい、消え入りそうな声と、
冷えた細い身体が、ひどくはかなく頼りなく見えた。
そんなことを言えば、『ばかにしているのか』と怒られてしまいそうだけど。
いつまでも待っていてくれる訳じゃないから。
俺とこのひとは、どうしても別々にしかなれないから。
それをできるだけ強く、深く繋ぐために引き寄せる。
テマリは、さっきよりは幾らかしっかりした声で、言う。
「あたしはここにいるよ」
俺はまだ、
このひとを引き止めてもいいんだという気がした。
END