novel

□スピカ
4ページ/7ページ

 








そこは、小さな広場のようになっていた。

明るい内は子供や散歩する人で賑わっているが、今はそういう時間でもない。

時折、思い出したように現れる人の気配に、微かに緊張がはしる。



階段を上るとテラスのようになっていて、
そこに吹く風をテマリは好きだと言った。



「それで木ノ葉を、はじめて好きだと思った」



「そう、なのか」








それまで嫌いだったのかよ、と思ったが、今は言わないことにした。








「それから、おまえのことも」






俺は、一瞬聞き間違いかと思ったけれど、テマリが得意そうに笑うから、それが間違ってないのだろうと思う。







「それは、どうも」



曖昧にそう言って視線を外すと、忍び笑いが聞こえた。








言葉にして言ったことがないかもしれない。

俺がこのひとを好きだということを。







 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ