novel
□スピカ
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そこは、小さな広場のようになっていた。
明るい内は子供や散歩する人で賑わっているが、今はそういう時間でもない。
時折、思い出したように現れる人の気配に、微かに緊張がはしる。
階段を上るとテラスのようになっていて、
そこに吹く風をテマリは好きだと言った。
「それで木ノ葉を、はじめて好きだと思った」
「そう、なのか」
それまで嫌いだったのかよ、と思ったが、今は言わないことにした。
「それから、おまえのことも」
俺は、一瞬聞き間違いかと思ったけれど、テマリが得意そうに笑うから、それが間違ってないのだろうと思う。
「それは、どうも」
曖昧にそう言って視線を外すと、忍び笑いが聞こえた。
言葉にして言ったことがないかもしれない。
俺がこのひとを好きだということを。