novel
□たしかなこと
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私の弱さを嫌でも認めさせられる。
そう思いながら、会議室を後にしたところで、
彼に会った。
『あ』
同時に声を上げる。
お互いが、お互いのことを考えていたことがなんとなく分かったけれど、
思っていたより傷だらけのシカマルを見て、不覚にも目頭が痛む。
「悪かったな、今日」
彼は、そう言って通り過ぎていく。
私は、何か言おうとしたけれど、声を出せば一緒に涙が落ちそうだったので、
頷いただけだった。
「おい」
宿までの案内を断り、ひとりでゆっくり歩いていると、
後ろから声を掛けられた。
振り返ると、シカマルが居た。
走って来たらしく、頬が紅潮している。
乱れた呼吸を整えるため、膝に手をついて下を向き、
「おまえ、さっき何か変だったから」
と言う。
こういうことを平気でできる男なのだ、この男は。
大きく息をついてもういちど私の方を見たシカマルは、
驚き、慌てて私の頬に手を伸ばす。
私は、泣いていたらしい。