novel
□たしかなこと
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『たしかなこと』
寝返りをうつつもりで身体に力を入れ、それができないことで目を覚ます。
ああ、そうだった。と、
私は少し汗ばんだ額に手をやった。
それ以上動けない状態なのは知っていた。
夕食は食べていないし喉が渇いたし、起き上がりたいと思うのだけれど、
それもできないままもうどれくらい経っただろう。
身体のだるさに任せて一度は眠りについたけれど、すぐに起きてしまった。
そんな思いをしても、
私の上で眠ってしまったひとを、
(あまりに気持ち良さそうに寝ているから)
起こしたくなかった。
彼は、
ほんとうはいろいろとある私の中の感情を、
ひとりで、いちどに、幾つも引き出しては、
うれしそうな顔をする。
分かってるんだろう。
私が、そんなに幾つもの感情が入り混じった複雑な気持ちになるのは、
そしてそれと一緒にたくさん表情を変えるのは、
シカマルの前でだけだということ。